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森づくりの原理・原則  自然法則に学ぶ合理的な森づくり

単行本森林と林業を知る本

森づくりの原理・原則  自然法則に学ぶ合理的な森づくり

60の原理・原則が自然法則にあう森林管理を教えてくれる。

著者 正木 隆
定価 2,530円 (本体2,300円)
ISBN 978-4-88138-357-5
体裁 A5判 200頁

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 樹高や材積の成長には自然のルールがあります。森林生態系の言葉である原理・原則です。

 本書は、森づくりの科学的根拠となる原理・原則を読み解き、そのルールを知ることで最適な森づくりを考える本です。

 間伐率はどうあるべきか、材積成長の最適化はどう見るか、皆伐、再造林の在り方、混交林、更新の確保、災害に強い森づくりなどは、何を根拠に検討すべきか。そうした答えを本書から見つけることができます。自然の法則にあった森づくりこそ、持続可能な森林管理の土台です。

 専門的で難解になりがちな内容も、わかりやすい語り口、写真や図表でなるほど、納得。森林に興味のある方、林業関係に携わる方におすすめです。

 
 

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著者プロフィール

正木 隆

東京五輪、新幹線開業、阪神タイガース6回目の優勝という歴史的な年に東京都江戸川区に生まれる。近所に森林は皆無。空き地や江戸川河川敷の草地が主な遊び場だった。高校の部活(音楽関係)の顧問の先生が山好きで、いっしょに尾瀬を歩いたときに初めて森林を意識する。高校を卒業してK大学の理学部物理学科に入学したが、あるとき、本屋でどろ亀さんの本を偶然手にして森林の研究で飯が食える世界があることを知り、思い切って路線を変更。「どうせならどろ亀さんのいたところがいい」と東大の林学科になんとか入学し、落葉広葉樹林での研究で博士(農学)となる。平成5年に農林水産省森林総合研究所(当時)に採用されて東北支所勤務となり盛岡で10年を過ごす。その間、天然スギ林やブナ原生林の消滅に憤り、一方で秋田スギや南部アカマツの人工林の美しさを知った。その体験がこの本のエッセンスとなっている。平成17年から筑波勤務となり、研究活動の傍ら准フォレスター研修や森林施業プランナー研修の講師も経験して現在は企画部研究企画科長を務める。ちなみに、阪神ファンというわけではない。

編著書に『森林生態学』(共立出版)、『スギの絵本』(農文協)、『森の芽生えの生態学』(分一総合出版)、訳書に『BUGSで学ぶ階層モデリング入門』(共立出版)などがある。

主要目次

   森づくりの原理・原則とは 

基礎編 第1部 日本の自然環境

  原理・原則1 ─気候 
日本の気候=温暖多雨を知る─技術成立の土台 

日本の気候の特徴─温暖多雨/異なる自然環境だから成立する技術もある 

  原理・原則2 ─森林植生 
「氷河期」で理解する日本の森林植生─ヨーロッパとの根本的な違いを知る 

弥生時代以前─スギ・ヒノキと常緑・落葉広葉樹の混交する森林/氷河期の森林の主役─モミ・トウヒ・ゴヨウマツ 

  原理・原則3 ─土壌 
土壌を知る5ファクター─「森林とともに発達する」を知る 

崩れやすい急斜面の地形が多い/土壌は森林によって保たれ、発達する/微地形が多く、A層の厚さも多様 

 原理・原則4 ─水 
日本の水環境─水が豊富、湿度も高い 

植物にとっては水が豊富な土地/湿度も高いのが特徴 

 原理・原則5 ─森林被害 
自然現象との向き合い方─自然撹乱による森林被害は「前提条件」として捉える 

山火事/台風/自然撹乱─自然現象による森林の破壊 

 原理・原則6 ─植生 
潜在自然植生と原植生─「原植生」は化石や花粉分析から明らかにできる 

「潜在自然植生」─未来の植生/「原植生」─過去の植生 

 

基礎編 第2部 樹木の生態 

 原理・原則7 ─生命の基本 
樹木は生きている─観察し、性質を理解する

樹木が吸収する要素─二酸化炭素、水、窒素、ミネラルなどの養分/昼にエネルギーを貯えて、夜に木は太る/活力の高い木─たくさんの葉、旺盛な光合成/死んだ細胞が幹となる 

 原理・原則8 ─芽生え 
木の一生(1)芽生え期─芽生え期でほとんどが枯れる 

莫大な数の芽生え/芽生えの姿には樹木の性質が現れる/芽生え期でほとんど枯れる 

 原理・原則9 ─稚樹 
木の一生(2)稚樹期─針葉樹の幹はバネのように柔らかい 

稚樹期の針葉樹は「柔らかい」/柔らかい理由─幹の細胞は螺旋状に配置/暗所の稚樹─幹が細く、根が貧弱 

 原理・原則10─若齢期、成熟期 
木の一生(3)若齢期から成熟期─材は硬くなり、花を咲かせ、種子をつける 

若齢期─葉がたっぷりと生い茂り、樹高をどんどん伸ばす/若齢期の中頃以降─元玉から硬い成熟材に覆われていく/成熟期─伸びは止まるが、着葉量が十分ある限り、樹勢は衰えない/成熟期─花を咲かせ、種子をつける/花より葉─悪環境下では花の数を減らし、葉の確保を優先する 

 原理・原則11─老齢期 
木の一生(3)老齢期─森林の生物や若返りに貢献する 

老齢期─枝が存在感をもち始める/老齢期の木が倒れて起こる2つの変化─光と苗床/老齢木・枯れ木の価値を知る 

 原理・原則12─寿命 
樹木の寿命の見方─樹木の成長段階は直径で判断する 

短命な木、長寿の木/樹齢では判断できない樹木の成長段階/直径で成長段階を判断する 

 原理・原則13─樹高成長 
樹高成長の法則─樹種、土壌、気候が同じであれば、樹高成長は同じである 

密度は樹高成長に影響しない/レッドウッド─世界一の樹高/樹高成長はいつまで続く? 

 原理・原則14─光合成 
樹木の1日─午前中に光合成を行い、夜は幹を太らせる 

樹木は午前中に光合成を行い、夜は幹を太らせる/陰樹と陽樹─稚樹や芽生えの光合成能力の違い 

 原理・原則15─葉の役割 
樹木の1年(1)葉─6~7月に光合成の能力が最大となる 

落葉樹と常緑樹の“経営戦略”/6~7月にもっとも樹木は活発に活動する─気温が重要 

 原理・原則16─材の形成 
樹木の1年(2)材─季節によって細胞の壁厚、数量が変わる 

針葉樹の材─細胞の太さ、壁厚が変化する/広葉樹の材(環孔材)─導管の割合が変化する 

 原理・原則17─樹形 
針葉樹と広葉樹の生き方(1)─樹形に差が表れる 

樹形に生き方の差を見る/樹冠の拡張─針葉樹は上へ、広葉樹は横へ 

 原理・原則18─吸水力 
針葉樹と広葉樹の生き方(2)─針葉樹は常に水を吸い続け、広葉樹は条件によって水を吸う力を変化させる 

針葉樹と広葉樹の水の吸い方の違い 

 原理・原則19─針葉樹種間の比較 
スギ・ヒノキとアカマツ・カラマツを比較する 

アカマツ─天然更新が容易/寿命と更新のしやすさ─スギやヒノキは1,000年、アカマツは300年/土壌中の菌類との関係─スギ・ヒノキは内生菌、アカマツ・カラマツは外生菌と共生/カラマツ─スギ・ヒノキより短命、更新は容易/スギやヒノキは長い時間をかけて育てるほうが、本来の力を引き出せる 

 原理・原則20─萌芽 
伐採されても再生する樹木─根からの指令で萌芽する

萌芽─「休眠芽」と「不定芽」/根からの指令で休眠芽が目覚める/萌芽で再生できる基準 

 原理・原則21─伏条、根萌芽 
伏条、根萌芽─タネを使わない樹木の増え方 

植物クローン─挿し木・伏条/根萌芽─地中の根から新たな芽を出す増え方/挿し木、根萌芽する樹木─太い根を作りやすい 

 原理・原則22─種子の生産 
天然林でのタネによる樹木の増え方(1)─種子の豊凶現象がある 

種子の豊凶とその原因/ブナ、スギ─花の観察で種子の豊凶を予測/タケ・ササ─究極の豊凶現象を示す 

 原理・原則23─種子の飛散 
天然林でのタネによる樹木の増え方(2)─タネが広く浅くばらまかれるための仕組み 

羽、柔らかい果肉─タネが広く浅くばらまかれるための仕組み/樹木のタネの飛散範囲─ 95%が30m以内 

 原理・原則24─低木 
低木(低いままの木)─地下部に貯えをつくる低木は伐られても再生しやすい 

低木は花と実、地下部へと貯えを配分する/低木は伐採されても再生しやすい/ササは種類によって「稼ぎ」を貯える部位が違う

 

基礎編 第3部 森林の生態 

 原理・原則25─林分成立段階、若齢段階、成熟段階(天然林・人工林)
森林の一生(1) 林分成立段階~若齢段階~成熟段階─林冠の隙間、林床植生の多少に注目

 林分成立段階─森林の一生の始まり/若齢段階─林冠は樹木の葉で完全に閉鎖/成熟段階─林冠には隙間があり、林床には植生が繁茂 

 原理・原則26─老齢段階(天然林) 
森林の一生(2) 老齢段階─幅広い成長段階の樹木で構成される 

森林の老齢段階─大木が寿命や撹乱で枯れると林冠に大きな孔があく/老齢段階─芽生えから老齢木まで幅広い発達段階の樹木を含む/人工林が老齢段階に達することは現実的にはほとんどない 

 原理・原則27─若齢段階の密度と材積(天然林・人工林) 
若齢段階での自己間引き法則─密度が半減すると材積は1.4倍に 

「自己間引き」とは─隣の樹木との競争の結果で起こる/「自己間引きの2分の3乗則」─日本人が発見した生態学理論 

 原理・原則28─成熟段階?老齢段階(天然林・人工林)
均等配置の法則─樹木配置の重要原則 

発達段階が進むと樹木は自然に均等に配置される 

 原理・原則29─更新の可否(天然林) 
親木の直下では更新が起こりにくい─普遍的な原則 
 原理・原則30─土壌環境 
林床の植物から土壌環境を推定できる 

土壌から適した植種を選定できる/林床植物を指標に地位を推定 

 原理・原則31─林床植物の成長パターン 
林床植物─光合成の産物を根系へと貯え、その養分を展葉に使う 

光合成のピークは6~8月 

 原理・原則32─つるの生態 
つる植物─巻き付き型と張り付き型 

1年間に3~4mも伸びることも/巻き付き型のつるの楽園─若齢段階の森林/張り付き型のつる─どの段階の森林でも木に取り付く 

 原理・原則33─分布を決めるもの 
樹木の分布と適地適木は同一ではない─各樹種の縄張り争いと複雑なプロセス  

スギ・ヒノキは陣取りが苦手/前生稚樹は樹種本来の適地を反映しているとは限らない/長い時間軸での変化をイメージする 

 原理・原則34─養分の移動 
養分移動の法則─土壌から地上部へ 

養分は土壌から樹体内に移動する/葉の重さ(スギ林4割、ヒノキ林2割)と窒素の割合/老齢段階の手前まで続く養分の移動/土壌中の窒素量は地上部の数倍以上/大気から補充される窒素、されないミネラル 

 原理・原則35─埋土種子の寿命と役割 
森林の世代交代に埋土種子は当てにならない 

森林の土壌中の埋土種子/樹木のタネの寿命は4?5年未満/埋土種子の寿命が尽きる頃/森林の世代交代には実生や前生稚樹が有効 

 原理・原則36─多面的機能と林分の関係 
森林の多面的機能の変化─成長とその他の機能は逆のパターンを示す 

若齢段階では、生物多様性と水源涵養機能性は低下/材積成長を解く2つの学説 

 原理・原則37─生物多様性の意味 
生物の多様性の意味とは? 何に役立つのか? 

生物多様性=「その場所で生きている生物の種類の数」/バランスがとれている老齢段階の森林/生物多様性は何に役立つのか

 

応用編 第4部 森づくり 

 原理・原則38─間伐の目的 
間伐は目標林型を達成する手段 

間伐の目的─産業として人工林の生産目標を達成するため/目標林型でもっとも重要な要素─目指す木の太さ/目標直径の設定で目標本数が決まる 

 原理・原則39─間伐の直径コントロール機能 
間伐で着葉量をコントロールし、直径成長を操る 

間伐に関連する2つの原理・原則/若齢段階での無間伐・間伐の比較/着葉量と無間伐・間伐の関係 

 原理・原則40─診断の根拠となる指標 
若齢段階の森林を診断する─3つの指標「樹冠長率」「相対幹距比」「収量比数」で評価 

樹冠長率─最低40%、理想は60%/相対幹距比─ 17?22%が最適/収量比数─密度管理図で読み取る/森林の診断に樹高情報が必須 

 原理・原則41─形状比(樹高と直径の比率) 
形状比─風害や冠雪害のリスクを表す指標 

形状比80 以上は高リスク/樹冠疎密度は樹木の健全性とは関係しない 

 原理・原則42─間伐率 
間伐率の考え方 

間伐率は何割にしたらいいのか/生産目標によって間伐率は変わる/「育てる木」を決めてから妨げる木を間伐する発想/間伐率が指定されている場合 

 原理・原則43─列状間伐 
列状間伐─「若齢段階で1回のみ行う」が森づくりの原則 

列状間伐─個性を見ず、量(列)で伐る/森づくりの原則に合わない点/「列状間伐は若齢段階で1回のみ」を原則に 

 原理・原則44─密度管理図 
密度管理図の原理・原則─有効なケースを知る 

密度管理図─自己間引きの理論を応用/密度管理図の3つの不具合/密度管理図が有効な場面 

 原理・原則45─間伐と多面的機能 
間伐と多面的機能の関係─多面的機能が高く、成熟段階に近い林相を間伐でつくる 

林内の光が多面的機能を高めてくれる/間伐が水源涵養機能を高める/間伐で花粉生産量を低減させるための条件 

 原理・原則46─樹冠(広葉樹) 
広葉樹林の目標林型と間伐のポイント─樹冠が広がる性質を知る 

「頂芽優勢」に沿った間伐方法とは/皆伐後の再造林時の植栽密度の考え方/樹冠長率より力枝の枝下高が指標となる/間伐すべき木は上層木。中層木、下層木は残す/育てる木は早めに選ぶ 

 原理・原則47─二酸化炭素 
二酸化炭素の吸収と蓄積─気候帯、土壌タイプ、森林の発達段階で異なる 

大気中の二酸化炭素濃度を高めた森林伐採/炭素は森林のどこに貯まるか?/老齢林の倒木も炭素貯留に重要な役割/炭素増加量と森林の発達段階の関係 

 原理・原則48─生産目標と伐期 
伐期の決め方─生産目標で決める 

齢よりサイズ(胸高直径)が重要/成長曲線と収穫効率/現行システムと現実との大きな乖離 

 原理・原則49─適地適木 
適地適木の判断基準─樹木の土壌水分等への反応が決め手 

スギ、ヒノキ、アカマツの土壌水分への反応/広葉樹は過敏に土壌水分に反応/適地適木の要因─土壌、多雪など 

 原理・原則50─皆伐面積 
皆伐面積の決め方─自然撹乱による破壊・再生パターンから判断する 

皆伐─森林を一時的に破壊し、植林等で再生すること/自然摂理の範囲内での皆伐目安─ 50年伐期は約1ha 以内、120年伐期は約2ha以内 

 原理・原則51─地力低下 
皆伐と地力低下の関係─養分を保つ工夫 

全木集材による地力低下/地力の低下を回避し、養分を保つ方法 

 原理・原則52─初期保育 
初期保育の適期─根系の貯え、植物が「寝ている」時期に行う 

植物を叩く─貯えの量が少なくなる6~7月に行う/植物を育てる─植物が「寝ている」秋?冬に作業を行う 

 原理・原則53─皆伐方法 
自然撹乱を模倣した皆伐方法─木を残す施業と複相林 

木を残す施業─皆伐時に木を多少残しておく施業法/複相林─大面積での撹乱を避け、より小面積の伐採区を散らす方法 

 原理・原則54─混交林 
スギ・ヒノキ人工林+広葉樹の混交林─その難易度と可能性 

50年生前後の若齢段階からの混交は難しい/多雪地帯のスギ+広葉樹混交林/成熟段階以降の広葉樹との混交 

 原理・原則55─天然更新 
天然更新の難易度と方法 

皆伐後の天然更新は難しい─天然更新を邪魔する植生が繁茂する/天然の稚樹が育つ環境をつくる─上木を択伐する 

 原理・原則56─天然更新と林業経営 
「皆伐後、放置しても森林に戻る」嘘か誠か─材を生産する立場からは、皆伐後の天然更新は避ける 

材を生産する立場からは、皆伐後の天然更新は避けるべき 

 原理・原則57─シカ個体数増減 
シカ個体数増減の法則 

シカが増加した複数の要因/シカの個体数が自然に減ることはない 

 原理・原則58─目標林型モデル 
森づくりの原則の参考モデル─明治神宮の森 

計画的に植栽し、天然林状態を創り出した設計方針とは/その1 自然の仕組みに忠実/その2 途中段階、最終段階の目標林型が明確/その3 樹種の選択が適切 

 原理・原則59─森林管理と目標林型 
「配置の目標林型」とは─その4原則 

原則1 地位と地利に基づく森林の機能の配置/原則2 渓畔林は木材生産の場としない/原則3 地位の低い場所では無理に木材生産は行わない/原則4 生物多様性の保全─広葉樹林は大面積で一体的に配置する 

 原理・原則60─疑う姿勢 
「定説を常に疑う」姿勢が大事─従来の指標や考え方は新しく塗り替えられる 

定説がくつがえった例─樹高成長曲線の補正/「定説を疑う」 

 原理・原則61─正解のない森づくり 
最も重要な4つの森づくりの原理・原則 

その1「生物として森を見る」/その2「大事なことは何1つわかっていない」/その3「やってはいけない森づくり」/その4「正解はない」 

結びにかえて

索引   

 

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