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作業道の専門書が登場しました。作業道を体系的に解説した専門書としてわが国初の本です。
本書は、「理」にかなった道づくりと効用を解説したものです。作業道の経済的側面だけでなく、環境的側面からも新しい見方が盛り込まれています。作業道の種類、実例から作設の基本、林地の環境や水土保全へのプラスの効果など、いままでに解明されていなかった作業道の公益的機能も紹介しました。
経営、そして環境に役立つ作業道
作業道は人がつくりあげてきたもの。森林文化といっても過言ではありません。本書によって作業道の新しいとらえ方、解釈、施工の理論的裏付けが得られ、あらたに自分の地域にあった作業道の作設や森林作業の方法を見つけ、実践される一助になることを願います。
■本書の特色
★作業道全般を体系的に解説する実務書(体系的な技術書)。
★作業道に関するさまざまな考え方、理論、実践を整理。
★各地の事例を引きながらの実践的な解説。
★作業道の経済的効果を紹介。
★作業道の環境的効果(水土保全、防災面など)についても解説。
★写真、図表を多用し、分かりやすい解説。
現在、東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林教授・北海道演習林長。
「合理的集運材方式に基づく長期林内路網計画に関する研究」で農学博士。
座右の銘は「国の宝は山なり 山の衰えは則ち国の衰えなり」(秋田藩家老渋江政光遺訓)。
第1章 林業と作業道
作業道網は、経営者のポリシーを反映する
林道が動脈とすれば、作業道は毛細血管
地域の実情に根ざした路網開設の努力
第2章 日本における作業道の役割と効用
林業機械化と路網の果たす役割
人工林造成の歴史的経緯
民有林機械化の黎明と小形集材車両の台頭
列状間伐の試み
基盤となる路網整備
第3章 作業道とは―林道とのちがい
3.1 作業道の誕生・歩みと定義
作業道の明確な定義は難しい
作業道の歴史的背景
「作業道」という用語はいつ生まれたか/当初の「一時的搬出施設」という見解/1970年、統計として登場/第二次林構以降に作業道作設が加速/林野庁「林道問題検討会」の見解/長期間継続的に使用する作業道
3.2 これからの作業道
現代の作業道の定義
繰り返し長期に利用され、多目的、多機能
3.3 作業道と林道のちがい
作業道には災害復旧補助がない
林道の機能・役割と都道府県の作業道基準
第4章 作業道の種類と実例
幅員と車両の関係
4.1 幅員1.5m~2mクラス―愛媛県久万林業
ゴムクローラ式小形運材車を前提に
幅員1.5mの作業路
主伐にどう対応する
4.2 幅員2mクラス(群馬県下仁田町)
林内作業車デルピス号発祥の地
デルピス号設計のコンセプト
「作業道の運材は1,000mまでとしたい」
急勾配はコンクリート舗装して資本投資
デルピスの作業性能
路面補修とコスト
セット数と作業規模
町と森林組合による作業道管理
4.3 幅員2.3m~2.9mクラス(宮城県登米町)
4輪車両リョウシン号が活躍
4.4 幅員3mクラス
ホイールトラクタや大形フォワーダの利用
4.5 高性能林業機械と作業道
高性能林業機械の作業システム
ハーベスタ+フォワーダ/チェーンソー伐木(+スイングヤーダ)+小形プロセッサ造材(+グラップルローダ)+小形運材車による作業道運材/チェーンソー伐木+タワーヤーダ集材+プロセッサ造材/スイングヤーダ/ロングブームハーベスタ+ログローダ
4.6 最新の作業道作設機械
自力で作業道を作設し、支障木の搬出も
4.7 高性能林業機械化時代の作業道
機械の小形高性能化と低廉化
第5章 作業道作設の基本
傾斜30゜以下と35゜以上では作設工法が異なる
5.1 緩斜地の作業道
土工量
切取りのり高
経験的に1.4m以下に抑える/事例検証―切取りのり高とのり面崩落
道路敷きの幅
路網開設による林地土壌および経営面積への影響
事前の配慮が必要/基準許容土壌攪乱度―カナダの例/作業道網による林地損失面積は数%
路網開設による潰れ地問題
林地損失を補うプラスの効果
5.2 急傾斜地の作業道
天野氏山林
自力で低コスト開設/作業道工法の特色/トラッククレーンをベースに集材
大橋氏山林
家族労働で間伐・択伐を可能にする路網/247m/haの路網密度/丸太組工法による木組でなければできない/道、機械、育林、作業、環境…すべてがつながる/排水を考慮した路網作設のポイント
天野氏山林と大橋氏山林の共通点と相違点
自然に逆らわず、幹線をしっかり設計
第6章 作業道の経済効果
6.1 作業道の間隔と密度
作業道間隔、集材距離と路網密度の換算方法
6.2 林業機械の生産性とコスト
理論式による算出コストと現場データの実測コスト
架線系の作業システムと生産性
モノレール、ジグザグ式、自走式搬器の作業システムと生産性
車両系の作業システムと生産性
6.3 作業道のコスト
路網密度の目安
道路の規格構造配分
作業道のコストの考え方
1.4 作業道密度と作業コスト
作業道開設で間伐作業コストをどのくらい低減できるか
タワーヤーダを例に取ると
6.5 高性能林業機械の生産性とコスト
現場の実データでみる生産性とコスト
コストが5,000円/m3以下なら国際競争力も
レンタル・リースへの補助にシフト
オペレータ養成策の充実を
第7章 作業道の環境・水土保全に対するプラスの効果
水土保全・環境保全にとって作業道は不可欠
7.1 防災水源かん養路網
土砂や水の流れを制御する作業道システム
防災水源かん養路網の実際例
7.2 作業道排水施設の移動土砂捕捉機能
土砂の林外流出を作業道が抑止する
縦断勾配から堆積土砂量を推定する
等高線に平行な路線の堆積土砂量/等高線に垂直な路線の堆積土砂量
7.3 路網開設による道路沿林縁木の材積成長効果
道路沿いでは生育木の光合成が活発化
材積成長増加の事例
列状間伐の実行間隔
植林直後の林分の収穫予定量
7.4 人工林における路網整備の適期
路網開設の支障木で開設費をまかなえるとき
7.5天然林施業と路網
択伐施業に必要な高密路網
択伐率の設定/上層木を中心に成長量を維持/路網密度が40m/ha以上にも
7.6 作業道の排水機能による林地防災効果
作業道を排水施設として積極的に活用
7.7 作業道の公益的機能まとめ
水土保全、環境保全に効果をもたらす作業道
第8章 路網の設計・施工―排水と環境保全を配慮する
8.1 分散排水
路網全体の排水機能をデザインする
事例1 大代国有林の分散排水
中傾斜地の高密路網と集約施業/路網の設計方針/急傾斜地の工法/選木、搬出システムの開発/のり面崩落対策と木製構造物/分散排水の方法/作業道コストと集水面積との関係
事例2 佐藤氏山林の分散排水
ミニバックホウによる自力開設で250m/ha/片勾配と簡易な横断排水溝の組み合わせ/路面補強策/逆片勾配施工
8.2 木製構造物の耐用と強度
作業道にふさわしい木製構造物
木製構造物の耐用
木材の腐朽特性を生かした構造物
木製構造物の強度と設計
木製構造物に働く力/補強材丸太が受ける力/木製構造物の重要な効果/フロント載荷を避ける/補強のり面の強度計算方法
8.3 樹冠と雨滴衝撃力
のり面侵食への樹冠の影響
8.4 渓畔域における配慮
水辺林の重要性
河川環境に配慮した工事
森林施業規程の例
第9章 林業機械化作業と林地の保全
9.1 車両が林内を走行することによる林地への影響
林業用車両の足回り特性
トラクタ集材による土壌締め固め
ハーベスタ+フォワーダ走行による路面の締め固め
9.2 間伐作業時の車両走行による林地土壌への影響
間伐作業車両による土壌締め固め
9.3 林地土壌と土壌支持力
Ao層の土壌支持力はきわめて小さい
褐色森林土と黒色森林土の土壌支持力の違い
第10章 作業道を活用した森林の空間利用
林道、作業道は森林ふれあいへの入口
人工林と広葉樹二次林では入山の対応が異なる/林内歩道の整備/目的、期間を制限した開放/入山者のマナー教育を
あとがき
作業道の普及啓蒙活動を/作業道は人がつくりあげた森林文化/成功の裏にあるもの
年表
索引
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コラム・用語解説目次
コラム 林内作業車と小形運材車
コラム 作業道以前の民有林搬出技術
コラム 間伐の必要性
コラム 人工林と長伐期林業
コラム 林業用語
用語解説 高性能林業機械
コラム 先達の寸鉄金言
コラム 地形図から平均傾斜を知る方法
コラム 数字データの落とし穴
コラム タワーヤーダのインターロック機構
コラム 高性能林業機械によってコストは下がったか?
コラム 健闘する日本林業
コラム 森林鉄道の技術史
コラム 理科(生物)教育から林道を考える
解説 土壌支持力と接地圧の測定方法