タイムマシンがあったら行ってみたい時代と場所の一つに、自分が生まれた頃のこの村があります。
日本の山の木が、伐っても伐っても足りず、林業はその舞台を拡大すべく天然生の広葉樹をどんどん伐出して、奥山へと人工林を広げて行った時代。拡大造林がはじまる直前の山々を見たい。
今までそれは、単に自分が生業にしている世界の、最も活気付いていた頃を見たい、という好奇心によるものだろうと思っていましたが、どうやらそうではなく、見つからないパズルの一こまを埋めなければならないときのような、もっと切迫した感覚によるものらしいことを、昨日のシンポジウムは気づかせてくれました。
政権交代とともに、林政が大きく舵を取りなおそうとしていることは、先日もこのブログに紹介しましたが、結果的にその中で大きな役割を果すであろう「30の提言」を発信している持続可能な森林経営研究会による、その提言について考えるシンポジウムが昨日行われ、多くのことを考えさせられました。
「大きな役割を果すであろう」というのがなぜかと言えば、研究会のメンバーの多くが、農林水産省の森林・林業再生プラン推進本部の下に設けられた検討委員会の委員であり、提言づくりに大きな役割を果した人物が内閣官房国家戦略室内閣審議官になっているからです(ちなみに、委員会のひとつ人材育成検討委員会では、このブログ長屋でおなじみの方も活躍されるようです。昨日、会場に居たのかな??)。
その審議官になられた梶山さんによれば、再生プラン実行の準備が進められているとのことですから、新年度から新たな助成制度や補助金が山や事業体に注がれることでしょう。プランでは2020年までに木材自給率を50%にすることを目標に、たとえば今後10年間でドイツ並みの路網密度を達成する、ということが謳われています。背景には、日本の人工林の多くが4~50年前に植えられ、今、間伐材を搬出して利用できる林業を取り戻さないと、林業に未来はない、という危機感があります。
さてそこで自問です。「これから材木と機械化一色になってゆくだろうこの山で、おまえさんはどのように生きるのか? ~生きたいのか?」
問うてみてはじめて気づいたことが、冒頭のタイムマシンの願望でした。つまりこの15年、山で働いてはきたものの、けっきょく自分には木を生産して食ってゆくという生業の実感がまったくないのです。だからこそ、材木がどんどん流通し、皆が眼を$マークにして植林していた時代に行ってみたい。できればそこで2~3ヶ月働いてみたい...。
山で仕事をするものとして、どうやらネジが一本足りない自分。これから山で始まろうとしていることから比べれば、無に近い小さなことですが、個人的には悩みどころです。
ところで、「木材生産能力に優れた森をつくり維持すれば、森林の持つ公益的機能も守られる」との考え方は間違いである、というのが私の理解しているところです。そして自分が最初にこの世界に足を踏み入れたのも、環境問題から。
幸いなことに今日は午後もベタベタの雪です。確定申告でもやりながら、再び自問してみましょう。
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