秋の境内にて
お祭りの境内には子供の頃と変わらないワクワク感があります。さすがに小銭を握りしめて、露店でしかお目にかかれない特別なおもちゃを物色する、ということはありませんが、はだか電球の怪しい輝き。たちこめる煙。この雰囲気が何とも言えない…。
収穫が終わると、里の田畑に来ていた神様は山に帰ると聞いたことがあります。この夏も無事に乗り越えられたことに感謝しつつ、お神酒をごちそうになりました。
お祭りの境内には子供の頃と変わらないワクワク感があります。さすがに小銭を握りしめて、露店でしかお目にかかれない特別なおもちゃを物色する、ということはありませんが、はだか電球の怪しい輝き。たちこめる煙。この雰囲気が何とも言えない…。
収穫が終わると、里の田畑に来ていた神様は山に帰ると聞いたことがあります。この夏も無事に乗り越えられたことに感謝しつつ、お神酒をごちそうになりました。
観光地に暮しているということは、不思議な感じがするものです。自分が日常の生活空間としているところや、遊び場にしているところへ、はるばる旅感覚でたずねてきてくれる人たちが居る。ところがそれほどまでのところなのに、暮らしている当人にっとっては見慣れてしまって、その地域が持っている魅力や可能性を実感することができない…。昨日からの二日間、三鷹市からのハイキングツアーのお客さんを案内していて、ずっとそんなことを考えていました。
一日目は、隣村にあるダム湖周辺の紅葉を楽しみ、二日目の今日は、村の奥座敷金峰渓谷の遊歩道を歩きました。山慣れしている人には、ちょっと物足りないコースだったかもしれませんが、とにかく初心者対象ということで、安全性優先のコース設定になったわけです。
そして、実は今回も癒されてしまったのです。計画段階では「10月下旬に川上でキャンプファイヤー??」と、正直あきれていたのですが、昨晩、炎を囲んでの歌の時間、どうもいちばん楽しんでしまったのは私なのではないか? と反省しなければならないくらい、楽しい時間を過ごさせてもらいました。
意識して創りあげるようなノウハウもテクニックもないけれど、この村をたずねてくれる人たちの旅が、どこか心に残る旅であって欲しい、という欲求が、最近急激に強まっていることを感じています。
先週末の三日間、岐阜県郡上八幡で開催された林業アイターンミーティング。すでに第一報を掲載しましたが、信州そまびとクラブの工藤さんから、私が撮影できなかった実習班の画像が届きましたので、続報としてお伝えします。
最近思うのですが、この下にも紹介するかかり木処理のアイディア、道具代はかかりますが、荷物にならずに安全かつ楽ちん、こういうものの普及には今回のITMや業界誌の紹介コーナーなどの果す役割が大きいのですが、自分も含め「良いとわかっていて、やってみない」というのはどういうことなのかな?と悩みます。もっと頭をやわらかくしなきゃいけない!
三日目は、密集したヒノキ林での切り捨て間伐がテーマでした。この行事、参加者が多様なので、実習ではその人の経験に応じた班分けを行うことになっており、これは経験年数5年未満の人を対象にしたものかと思います。講師はこのサイトにも時々書き込んでくれる○○さん(=だんさん)。一部始終を見ていた工藤さんによると、説明がわかり易く「これはいただき」というネタが随所に見られたとか。
ペツルのミニトラクションでしょうか。講師はこうしたクライミングギア(フリークライミングなど岩登りで使う道具)応用のエキスパートです。滑車で力の方向を変えつつ、中にあるカム機構でロープが反対方向に戻らないという仕組みを上手に利用しています。
かかり木処理も、ちょっとした道具を持ち込むだけで、このように力の方向を変えて安全性が高まり、より楽な状態で行うことができるようになります。これだと引っ張るちからと、踏ん張る足の力の両方とも、木を倒す方向に作用することになりますね。
きこりのための起業講座の日程が決まりました。もう何年も前から暖めていた企画です。自分の技能を活かし、地域振興の一翼を担うべく、ふるってご参加ください。以下、業界誌などへ掲載をお願いしてある案内文です。
山仕事での起業をめざす方を対象に、起業・経営ノウハウを学ぶ講座を開きます。
「現場で働いているが、自分たちの考える山づくりを目指して独立したい」「ウチの親方もそろそろ引退、その後の身のふり方を考えなきゃならないし、自分が継承者のひとりになるかもしれない」という皆様、手前味噌ではありますが、信州そまびとクラブと仲間たちが起業で体験したことを、皆様の独立に役立てていただき、地域振興の起爆剤となるようお手伝いさせてください。
講座では、業態別の起業手続きや長所短所、地域での営業や見積もり作業の重要点、会計のノウハウ等を、実習を交えながら学んでいただきます。
日時: 11月29日午後~11月30日(一泊二日)
場所: 長野県南佐久郡川上村原 「三鷹市川上郷自然の村」
問合せ、連絡先 NPO法人信州そまびとクラブ
〒385-0062 長野県佐久市根岸294
TEL/FAX 0267-63-9610
電子メール:somabito@karuizawa.ne.jp
URL:http://www3.karuizawa.ne.jp/~somabito/
申し込み方法:上記ホームページから直接申し込んでいただけます。それ以外の方には、連絡いただければ申し込み用紙をお送りします。
受講費:13,000円(宿泊費、食費(2食)込み)
募集人員: 先着30名
受付締め切り:11月25日
(参加制限:山仕事での起業を学びたい18歳以上の男女)
ひとりで作業をしていると「あぁ、こんな時にせめてもうひとり仲間が居ればなぁ」というシーンによく遭遇します。昨日もそんな感じでした。午後から健康診断で現場には午前中しか行くことができません。でも今の現場は、車を降りてから登る時間が長いので、半日仕事では少し無駄が出てしまいます。そろそろ作業も終わりに近づき、補助金申請のための測量もやらなければならない。そまびとから借りたコンパスも早めに返したい。こんなとき相棒がいれば、健康診断前のハンパな時間を使って測量をしてしまうのですが…。
そんなことを考えていると、前日の晩に中学生の娘と目が合いました。偶然にも、平日の休みだと言うのです!
父: おとうは明日助手が欲しいんだけど、アルバイトしない
子: バイト? 何するの?
父: 測量
子: えっ、測量? …いいよ
彼女が「測量とは何か」を知らないだろう、と私が思っている以上に知らないことを知ったのは、すでに山を登り始めてからでした。とにかく手順を説明し、ポールとテープをひきづりながら歩き回ってもらいました。傾斜は30度前後、切捨ての木がバタバタと足元をふさぎ、かなり大変な思いをさせながら、0.6haの周測が無事に完了しました。
高度経済成長の頃、「金の卵」という言葉が流行しました。「当時、集団就職の若者を受け入れた企業の経営者たちはどんな思いだったのだろう」。まったく関係のないことですが、そんなことを考えた一日。
娘よありがとう、困ったときにはまたおねがいします。
岐阜県郡上八幡で開催された「第9回林業アイターンミーティング(通称ITM)」、今回も17都府県から75名の情熱あふれる現場技術者や森の関係者が集まり、高密度、高濃度の勉強会がくりひろげられました。上の画像はITM名物のチェンソー品評会。長~いチェンソーの行列は、とても一枚の写真には納まりません。
今回のテーマは「特殊な伐採へのいざない」。先月、ISA(International Society of Arboriculture)認定の本場コロラド州ロングモントでの3週間の研修(Arbor Master Training in Colorado)を終え帰国したばかりの上伊那森林組合の吉見次郎氏と小松誠司氏(以下、ジローさんとセイジさん)を講師にむかえ、アーボリカルチャーとは何か、そしてその最先端技術について紹介していただきました。
単純にバタリと倒すことができない木に登って上から伐りつめてきたり、枝を伐る作業全般のことを、業界では特殊伐採、略して特伐(とくばつ)呼んでいます。講師のセイジさによると、アーボリカルチャー(Arboriculture)イコール特殊伐採という狭い意味ではなく、樹木と共存する社会をめざして、言ってみれば景観造りに通じる社会的意義を持つ技術なのだそうです。
初日はとにかく作業を見せてもらいましょうということで、いきなりデモンストレーション。画像ではわからないかも知れませんが、口をあんぐり開けて、何がどうなっているのかサッパリ??という感じの人もちらほら。樹上の実演はジローさん、地上での解説はセイジさん。
枝を伐るジローさん。どんな体勢かよくわからないのは、画像が小さいせいばかりではありません。一度頭の中を真っ白にしてからもう一度ご覧ください。切断後、枝は静かに、ゆっくりと正確に目標地点に「荷降ろし」されました。
アーボリカルチャーに関する技術はアメリカでは完全に体系化されており、その洗練された様子は腰のギア類を見ても一目瞭然です
二日目の夜からはITM定番とも言えるこの道43年の大先輩、末武東(すえたけあずま)氏による安全、正確な伐倒のための講座。画像は三日目のプログループの様子。参加者が交代で一本ずつ伐倒を行い、伐り倒されるたび皆で伐痕に群がり、東さんの講評に耳を傾けることの繰り返し。今回も、持ち帰って早速試してみたい技術が山盛でした。
これまで林業関係の行事というと、私が参加したものはみな同窓会のように、どこに行っても同じ顔ぶれが集まるというイメージのものでした。どことなく同業者や仲間同士があつまってワイワイガヤガヤという感じだったのですが、来る10月26日、いよいよ長野県が、一般市民を対象にした森林・林業への理解を深めるためのツアーを実施します。
森林づくり現地見学バスツアー及びシンポジウムと題された行事。説明によれば「森林づくり県民税の活用状況等を実際にご覧いただくとともに、地域の主体的な参加による里山づくりについて御理解と御協力をいただく」ことを目的としているそうです。一般対象の「足つき」のツアー、しかも全県レベルで地方事務所ごとに様々な視察地を用意しているようです。
この画期的試み、ぜひ様子を見に参加したいのですが、ひとりでも多くの一見さんの参加を期待したいので、万に一つ募集人員に満たない場合だけ応募してみようかなと思っています。
長かった草との戦いが終わり、いよいよ間伐作業のシーズンです。この3ヶ月、ほとんど木を倒していなかったので、木を伐ることが実に恐い!!
あまりに恥ずかしくてブログには書かなかったのですが、今日作業する山は以前かかり木の処理を誤り、頭部直撃でムチウチになった山なのです。たいへんに混んだアカマツの林で、倒そうとするほとんどの木がひっかかります。その上、人里からも少し離れており、何かあったら下るのに苦労する場所。
こういうところでは普段以上に慎重に、自分の次の動作をキチンと決めておいてから作業を行わなければなりません。
生まれてはじめて木を倒すようなリセットされた感覚で動いてみると、これまで慣れにまかせてけっこう危ないことをやっていたことに気づきます。それでは皆様、行ってまいります。
放鳥っ! 生物屋的には、遺伝子はどうなのかな?なんてヤボなことを考えてしまいますが、とにかくお祭りですから。
遅くなってしまいましたが、先週末に立科町白樺高原で開催された佐久地区森林祭の報告です。今年で何回目だったかは失念しましたが、毎年この時期、長野県佐久地方事務所・中部森林管理局東信森林管理署・佐久森林林業振興会・佐久森林組合・開催地市町村の主催で、応募者全員で行う育林作業をメインに開催されており、今回ははじめて生産業者の集まりである新緑会のひとりとして参加させてもらいました。
すでに10月10日の話題「はげ山」にsomakudoさんが書き込んでくれたように、会場ではこれまでどおり林業関連の身内の方の姿を多く見かけましたが、県のホームページで一般参加を募集していたようなので、広く一般の方を対象としている行事のようです。
今回の発見は、いっしょに参加した素材生産を専門にしている社長さんの感想でした。曰く「こういう行事に参加すると、日頃やりつけていない作業を経験できる。そのことがまた、自分の山に対する姿勢を見直す良い機会になる…」。
事情を知らない方には不思議なことに感じられるかもしれませんが、現在当地方で林業に携わる人は、大きく分けて育林と生産という二つの流れに分類されるのです(もちろん事業所によってはそのどちらにも従事している人もいるのですが)、生産専門の人にとって、育林作業、しかも手鋸での作業をすることは、ある種の新鮮な体験だったようです。地域や作業内容の微妙な変化から刺激を受け、常に何かを感じ取る感性を持っていることに、うまく表現できませんがプロの繊細さのようなものを感じた爽やかな瞬間でした。
こういう出会いのおもしろさを知ってしまうと、どんどん深みにはまっていきます。山仕事はやめられいない! と言うか、同業者からの再発見は深い!!
photo by somanba
昭和20~30年代、日本中にこんな光景が広がっていたのでしょうか。木は山から出して使ってナンボ…ではありますが、かつてのハゲ山と違うところは、伐った後に植えない所有者が多いらしいということ。日本は、気候的に植物の生育に適した地域ですから、そのままでもやがては野となり山となります。「収支の悪い植える林業は、もう終わらせてはどうか」と言う専門家もいます。でも頭の硬い私としては、植えてモノになりそうなところには植えたい→草刈したい→育てたいという欲望を押さえることができないのです。
儲からない(と称していた)林業から売れて困るぐらいの林業へ、市場経済が否応なしに山を巻き込んでゆきます。それは単に山を坊主にするだけではなく、木材産地に暮す人の価値観や、産業構造をも翻弄してゆくことでしょう。私たちは、高度経済成長と拡大造林が山村にもたらしたものについて、はたして何かを学んでいたのでしょうか。
関係者よ、反応のことを心配せず、もっと発信せよ。もっと発信する術を身につけよ。
この村の周辺にも軽登山に絶好のルートがいくつかあります。その中から今回は山梨長野県境の横尾山(1818m)と飯盛山(1643m)へ二日間続けて町田市からのお客様を案内しました。
日常が登山のような商売ですから、あらためて自分自身のために登山をすることがなくなり、こんなときでもなければ登山靴をはくときのワクワク感も味わえなくなってしまいました。とは言え仕事ですから、40名のパーティにケガの無いよう、時計と睨めっこをしながら慎重に歩かなければなりません。平日のツアーなので、参加者は皆さん勤めをリタイアした世代です。中には生まれてはじめての山歩きという方もいます。いつもなら無事下山して、自宅に戻りホッとひといきついておしまいなのですが、今回は少し違う気分であることに気づきました。
帰宅して晩酌をしていると、何か心の深いところから癒されたような感覚につつまれました。「なぜなんだろう?」と振り返ってみると、どうやら私のすぐ後ろについて来られた方との会話が原因のようです。別段特別なものではなかった会話ですが、早い話が、私がカウンセリングを受けるような形になっていたのです。お客さんをもてなさなければならないはずの私が、こんな気分になってしまう…。さすがは79歳、数十年ぶりに山歩きを楽しんだという、人生の大先輩の下山したときの笑顔が、今も脳裏に焼きついています。
甲斐駒をバックにキアゲハ君。こんな山の頂上で蛹で冬越しかな??(画像は2枚とも下見での撮影)
夏中かかった草刈作業がようやく終了したので、報告の電話を入れると「杉山、おめぇ今どこに居るだ? とにかくいいから来てみろ」とのこと。おじゃましてみると、この秋の収穫を前に宴たけなわ。まるで匂いをかぎつけたかのようなタイミングの良い報告電話でした。
地域によってはマツタケはそれほど珍しいものではないところもあるでしょうが、標高の高い当地では、このクラスのものは「超」がつく希少品で、味も香りも極上です。例年32万円する山を今期16万円で落札し、しかもこの大収穫。オーナーたちは本当に嬉しそうでしたが、その様子そのものが何だか私には嬉しくて、味覚もさることながら、新参者である自分に対して、めったにない機会に心安く声をかけてもらえたことが幸せな秋の一夜でありました。
「生徒が夏休みの研究で採集した植物を確認してほしい…」と、小学校の先生から電話がありました。一見なんでもない要請のようですが、タイトルを見てお気づきのとおり、当地では少々やっかいなのです。
そう、村人の何割かは国立公園の(普通地域の)中で暮らしており、生徒の自由研究は、自然公園法に抵触しかねないわけです。担当官の方にお願いして、今回採集したエリアがすべて普通地域の中であることを確認し、問題がないことを知りホッとしました、が、このことは、国立公園に指定されるほど豊かな自然の中に暮らしているということについて、考えてみる機会になりました。当然、私の仕事場も多くの場所が国立公園内です。以前仲間から「読んでおくように」と手渡された本を引っ張り出し、もう一度よく勉強してみたいと思います。
日本自然保護協会・国立公園制度検討小委員会報告書
「豊かな自然・深いふれあい・パートナーシップ ~21世紀の国立公園のあり方を考える~」
(2000年11月 財団法人日本自然保護協会)
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