なかなかどうして、本物は強い
昨晩の、地元の同業者団体の会議でのこと。用意されていた議題は、例年出展しているイベントへの会としての対応、県主催の行事への参加、そして会の旅行と、会議はさっさと終わり、みんな焼肉をつつきながらの世間話となりました。私は「いよいよかな?」と思い、先日お伝えした大規模なベニヤ工場をとりまく最新の話題を、耳をダンボのようにして黙って飲みながら待っていました。ところが、素材生産業と製材業の集まりなのに、ベニヤのべの字も出ないまま、時が過ぎてゆきます。閉会間際、しかたなく私から皆さんの動向や思いについて問いかけてみました。以下、抜粋で、
かなめ: Aさん、最近材料は入ってきますか?
製材A : いや、ぜんぜん材が動かないよ。去年の今頃に比べて半分くらいかな。公共事業が激減しているから、土木材は売れない。
かなめ: かなりの材がベニヤ工場に行っているようですが、建設計画中の大きな工場ができたら、材料がなくなって、やっていけなくなるのでは?
製材A : 今、素材屋さんの材の値段を支えているのはベニヤ屋さんだし、競争原理なんだから仕方ないでしょう。ウチでもいろいろと考えてやっている。
製材B : 杉山さんがいろいろ心配してくれるのはありがたいけど、なるようにしかならないよ。これまでもそれでやってきた。計画されている大工場だって、この先どうなるかわからない。扱っている商社の連中はもっと先を読んで、とっくにいろいろと手を打っているだろうしね。
かなめ : …
(私にとってだけかもしれませんが)奇想天外な対応策を持っている人もおり、自分の頭の固さをあらためて感じる結果となりました。国産材をとりまく環境が厳しい時代に、自力で生き抜いてきた皆さんは、ほんとうにすごい。私のような部外者が心配するのは、ほとんど趣味の世界でしかないのかな、と感じた瞬間でありました。
以上、かなりの短縮版ですが、民の自信、能ある人々の重さに、己が蟻んこよりも小さく感じられた夜についての速報でした。
コメント
Posted by: ふるだぬき [ 2008年9月11日 12:08 ]
山村の人々が、今まで生き抜いて来ることの出来た最大の功績は、このような「順応な根性」に他ならないと思っています。
江戸時代に江戸の大火が発生したとき、山梨県の某村の大地主が、[山林調査台帳」を持って江戸へ営業に行き、「今発注頂ければ年内に納入します」と言ったとか。
中越地震の直後に、とある森林組合が、県下各地から「どんなに高くても良いから」とカラマツの杭材を集めまわり、「こちらの言い値で一気に売りさばいた」うえ、「復旧時は杭材が売れるけど、被災が一段落したら構造材が売れるから、今のうちから構造材を集めておく」と言い放ったことなど、
生き抜くための情報収集と戦略は、実は町場の人間よりも優秀だと感じることが多いです。
Posted by: かなめ [ 2008年9月11日 21:16 ]
ふるだぬきさんのコメント、今回の会合に出席する前にうかがっておけば良かったなと思ってます。
生きる力とはしたたかなものですね。そして自分のその弱さを思い知りました(今日も一日、草を刈りながら噛みしめたのです)。
製材、素材ともに皆さん二代目で、地域生まれの地域育ち。一生懸命に語る私に気を遣いながらも、「何言ってんだよこいつ。抽象的な言葉ばかり並べて難しく考えやがって」という、心優しいクレームが伝わってきたのです。
皆さんには、各々の子供たちが関わっている少年野球や高校野球のことの方が、意思疎通や情報、人生における価値観共有のツールとして即効的に大切で、忙しい中で予定を合わせて集まってきている人たちにとっては、アイターンの戯言は迷惑でしかなかったのかもしれません。
今はただ、あのような大切な場で、自分の発言に気を遣っているような前置きをすることが不順なのだと、本題から外れることに気持がまわってしまうことしきりです。
いっそ私のにわか商売なんか、ただんでしまったほうがためになるような気がしてきました(笑)。
Posted by: ふるだぬき [ 2008年9月13日 09:32 ]
かなめさま
「温故知新」とはよく言ったもので、最近は「昔の話」に興味が湧きまくっています。
ここまでのめり込むきっかけになったのがNHKブックスの「知られざる日本」。先に記載した「江戸大火の話」はここからの引用ですが、著書の内容ばかりか、ご本人もなかなか面白い方で、学ぶべきことが多いので助かっています。
このあたりの話題も機会を見て一献傾けながら話をしたいものです。
Posted by: かなめ [ 2008年9月13日 18:52 ]
ふるだぬきさま
知られざる日本ですね、貴重な情報をありがとうございます。早速、注文いたしました(全林協さんの本じゃないけど、いいですよね)。宣伝文句を見る限り、こりゃ、今の日本の林業者がみんなで読まなきゃいけない本じゃないですか…。
それにしても、シカに関わって以来、歴史の道まっしぐらですね。まさしく温故知新。私も見習わせていただきます。一献の際には、著者のこともぜひ。