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そまびとたちの奮闘記

NPO法人信州そまびとクラブ。
山仕事をしながら、
林業のこれからの姿を提起します。

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伐倒方向と地域の関係

仕事がら木を倒すことがよくあります。この木を倒す行為を伐倒(ばっとう)と呼んでいますが、先日、都会の小学生の林業体験受け入れの際に、チェンソーでの伐倒のデモのリクエストがあり、安請け合いをしました。「ここをこう切って、あっちに倒すよ。ブン、ブーン。メリメリ、ドッシ~ン」 …と、デモは大成功かに見えました、が、甘かった。


 作業が終わってから、子どもたちの指導に参加していた林野保護組合の理事が私の耳元でささやきました。「おい杉山、失敗したな。あの木はあの立木の右側に倒すつもりだったな」。私はただ一言「言い訳はしません」とだけ答えました。


 毎度のことながら、デモのときに選ぶ木の第一条件は、失敗しても危なくない木なのですが、私のようにずるい人間は、危なくない木を倒す場合、つい緊張感を欠いた仕事をしてしまいます(日本語にはこういう状況を示す良い言葉がありますね、「手抜き」です)。


 緊張感を欠いた仕事が、いずれ大きなしっぺ返しとなってふりそそぐであろうことはともかくとして、今日述べたいことは他の視点です。当地には現役のきこりでない人の中にも、このように作業者の伐倒の精度を見抜いたり、山仕事の出来栄えから作業者の程度を察知してしまう人がゴロゴロしています。今でこそ農業が基幹になっていますが、少し遡れば、村民の誰もが山仕事と関わりを持っていた地域。経済的に衰退してはいても、人々の思い出の中に、生活体験としての林業の消えていない地域。そういう地域で自分は商売をしているのだということを、改めて己に言い聞かせることのできる瞬間でした。


 山仕事をした跡地を… 材木を積んだトラックを… 人々はちゃんと見ています。山仕事を通じての地域との関わりを教えてくれる師匠を持たない新規就労者が多い中で、伐痕(切り株)を指し示し、「ここは○○の事業体の××さんの班がやったところだ」という声を耳にしながらきこり修行できる自分は、なんと幸せなのだろうと日々感じています。


080704stump1.jpg

赤矢印が私が目指した方向。黄矢印が「この木の右側に倒さなければならなかった」と見抜かれた立木


080704stump2.jpg

ぞんざいな作業でコントロールをしくじった左右のツルの状況。中央に「恥」とでも彫刻しますか

コメント

Posted by: こーりきー   [ 2008年7月 7日 09:17 ]

はい。
どこにもプロはいます。
しかもゴロゴロと・・ハハ

私も
葉や幹を見れば・・木がだいたいわかりますが
転がっている枝を見ただけで
わかる人がいるんです。
えっ
ていう感じ(^^)


Posted by: かなめ   [ 2008年7月 8日 06:16 ]

 ころがっている枝で識別ですか…。「どうも、失礼しました」って感じでしょうか。
 このページを書いていて思ったのですが、その作業をしてお金をいただけるだけではやはりプロじゃないんですね。きっと自称プロなのでしょう。地域の皆さんや、古くからその仕事をしている人の信用、信頼が得られないうちは見習いでしかないのでしょう。
 道のりは長いです。

Posted by: by  toshibo   [ 2008年7月 9日 18:55 ]

ア ハハハ

Posted by: かなめ   [ 2008年7月10日 06:39 ]

 toshiboさん、ブログチェックありがとうございます。心強いです。


 次回、作業を見ていただく機会には、少しでも成長したところを感じてもらえると良いのですが… 相変わらず自信がありません。


 いよいよ来週から、電気柵のメンテでお世話になります。

Posted by: 木曾仙人   [ 2008年7月10日 09:09 ]

かなめ様、また、お邪魔します。
 
樹の形状からして偏心木の類でしたね。追い口の形状・ツルの厚みからして伐倒方向へ少しでも向けている、かなめ様の技術の高さがうかがい知れる
切り株の様子拝見しました。
 「神社の木」と同様、大径木・偏心木の伐採は非常に難しいものです。
当地区の杣夫の先達はいとも簡単に切り倒してしまいます。切り株をいつもチェックされ及第点に達する場合は稀です。そのときの言葉は、「ま、並に伐れたな。」、この言葉をかけて貰うため私も練習しています。
 また、先達に限らず地域のいろいろな人たち(地域柄、旧営林署の伐採夫のOBが非常に多い)から伐倒方法から目立てまで、やかましいくらい小言を言われます。この小言、一言一言が己の技術向上の糧、身にしみて確実に自分のものにしたいと思っています。
 失敗した切り株ですが恥ずべきことではないように思われます。そのままにしておきましょうね。私は上部を伐りとって家へ持ち帰っております。道具置き場のオブジェに、慢心の戒めにとても役立っています。
 それでは、また。

Posted by: かなめ   [ 2008年7月11日 08:01 ]

木曾仙人様
 林業エリート地域からのコメントありがとうございます。いつもながらの的確な読みに脱帽します。
 伐倒方向に対して、斜め横方向の偏心があったので、その量にツルで対応したつもりでしたが、画像に写っていない相手方の木の枝のはりが、考えていた以上にありました… と言うよりも緊張感を欠き、考えていなかったというのが正直なところです。こういう気のぬけたことをやっていては、いつまでも地域の仲間には入れてもらえませんね。技術と言っていただきましたが、実態はそういう標準化されたものとはほど遠い状況です。
 木を倒すこと以上に、出すことにおいても先輩たちはすばらしい判断力を持ち、知恵を蓄積しています。そういう人たちからの叱咤激励を受けながら、「ありゃ言ってもダメだから」という分類に入れられないようがんばります。
 失敗した切り株は、それを見るたびに自身に何かを伝えてくれます。慢心の戒め用に保管するアイディア、新鮮でした。

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そまびとたちの奮闘記 「そまびと」とは「きこり」のこと。現代のそまびと=技能職員たちが起業し、模索しはじめました。

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