事業開始の準備のひとつに銀行口座の開設があります。個人事業主として生計を立ててゆくだけなのに「取引銀行」などと表現すると、とても大げさに聞こえるかもしれませんが、そんなことはないのです。
たとえば、今あなたはとても若く、独身で、とりあえず自分ひとりが食ってゆけるだけの事業量を確保できさえすれば良い、と考えているかもしれませんが、目線を少し遠くに(つまり将来に)移してみた場合どうでしょう。事業には漠然としてではあっても計画があるでしょうし、それが明確な人ならばなおのこと、今後発生するであろう様々な取引のことを考えてメインバンクを決めることが重要になるのです。
このことは、さまざまな起業のための情報本や、ネット情報にも書かれていることですが、私はそれに加えて、自分の地域に近い場所に暮らしている、長年事業を営んできた経験のある方にも、口座開設にあたっての注意点をたずねてみました。
当地にはまず、日本の田舎ならばどこにでもある農協という金融機関があり、それに加えて○○信用金庫の出張所が一軒あります。しかし、相手の答えは意外なものでした。いわく
「あなたがもしも今後事業で大手企業などとお付き合いをする計画があるのならば、農協や信用金庫ではなく、○○銀行と名のつくところと付き合いなさい」。そして、私がすでに口座を開設している○○銀行の名をあげると、「それでは、その口座を開設している同じ支店で開設するべきです」との助言をいただくことができました。
もちろん私は、一介のフリーのきこりふぜいが、今後大手企業と取引をするような場面は想像していないのですが、いくつかの想定に基づいたアドヴァイスと、実績ある人のパワーに催眠状態になったとでも申し上げておきましょう、とにかくここは大事をとって○○銀行に要林産としての口座を開設することにしました。
事業拡大の必要があって銀行から融資を受ける際、銀行はその取引相手、つまり通帳に記帳される入金相手の名前の信用度も評価するのだそうです。それが公共事業をこなしている証であったり、大手企業から仕事を直接請負っていることの裏づけともなるわけです。また、同じ支店で古くから口座を持ち利用していることが、安定した生活を送っていることの証明になる可能性もあるのだそうです。
もうひとつ、起業ノウハウを扱った本からのエピソードに、こんなことが書いてありました。若くして起業し事業を行っていた人が、ある日設備投資のための数千万円の融資の相談をメインバンクに持ちかけた際、すんなりと融資を受けることができたのだそうです。その人は、将来に備え、たとえわずかな額ではあっても、起業前からメインバンクに定期的に積み立てを行っており、その実績が融資の決め手のひとつになったということです。
なんだか、常にお金を借りることばかり想定して起業の話をしていますが、準備資金や拡張資金は、もちろん手持ちですべて賄うことができるに越したことはありません。ただ、こういう準備作業を進めてみてわかったのですが、多くの事業家が資金をやりくりしていることを実感し、その過程をシェアしてみたくて書き込んでみました。事業を営むということには、目に見えることの何倍もの苦労があり、信用の蓄積や大勢の人の支援があるのだ、ということを改めて噛みしめています。
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