撤退
田舎では、住民ひとりひとりが様々な役割を分担して暮らしています。結論から言うと「あなたの職業は?」と問われた際に「私の職業は地域住民です」というのが適切なほどに、皆が多くの役を担っており、その傾向は村が小さくなるにしたがってより強くなるようでもあります。
後述する事情で、なかなかそのような地域貢献の機会の少ない私ですが、昨日、地域ボランティアのひとつ遭対協(長野県山岳遭難防止対策協議会)の雪上救助技術研修会に参加しました。3日間の訓練ですが、残念ながら私は胃の調子が悪化して、やむなく途中で撤退してしまいました。
訓練は、雪崩遭難者捜索の心得やビーコンの正しい使い方。山スキーのシールについてと実地訓練。雪山遭難全般に関する座学などで、実際に見て聞いてやってみなければわからないことばかりの、充実した内容でしたから、がんばって全日程に参加したかったのですが、雪山の高いところで自分が救助を要請することにでもなったら洒落にならないので、やむなく帰ってきた次第です。
地域活動の中でも消防団(私たちは「しょーぼー」と呼んでいます)は、地域の安全の要としての役割が大きく、最も重要な役のひとつと呼べるばかりでなく、皆ここで地域の大人たる基本的なことの多くを学びます。ですから、私のようにしょーぼーに入れてもらうにはちょっと年を食いすぎてから村人になった者は、言わば徴兵制度のある国に、年をとってから仲間入りした者のように「良いとこ取り」であり、ある意味一人前の大人でもないので、寂しく、かつ、ある種の申し訳なさを感じていました。
(この大切なしょーぼーの意義については、語りたいことが山ほどあるのですが、それはまたの機会に…)
村人になって3年目ぐらいのとき、そんな私に遭対協入団の声がかかりました。当地は秩父多摩甲斐国立公園の一角をなしていて、金峰山や千曲川源流へ、全国から毎年かなりの入山者があります。地域の観光資源のひとつでもあるそうした場所の安全確保や、万一の際の救助活動の支援などに、日頃から地元の山に通い、林道などにある程度の知識があるという点に、山好きということも加わり、声がかかったわけです。この話が来たときは「わずかでも恩返しができるな」と、嬉しく思いました。
山岳救助はヘリコプターが主役ですので、この地域での活動はそうした県警航空隊などへのサポートが多く、めったに出動することもありません(もちろん出動の機会など無いことが理想です)。この10年に一度だけ人力搬送をしたことがある他には、登山者への入山補導や、ポストの点検、年に二度の訓練参加が主な任務です。
今回の研修でとても勉強になった、雪崩遭難者救助用のビーコンによる探索の実習風景。今や積雪期の入山には、ひとり一台このビーコンを持つことがエチケットなのだそうです。発信と探索のふたつのモードを備え、同行者が目の前で雪崩に巻き込まれた場合には、自分の機械を探索モードに切り替えることにより、即座に埋められている場所を特定、救助することができます。そしてこの救助までの時間の短さが、そのまま救命の確立の高さに直結します。
講師が「レコ」と呼んでいたもの。電源がいらず、特定の電波を反射する性質があり、これを着けた服を着ていることでヘリからの探索ができるのだそうです。日本での普及はこれからとのこと
コメント
Posted by: いまい [ 2007年2月22日 19:11 ]
遭対協訓練ご苦労様でした。2/21の信濃毎日新聞・中信欄に記事が掲載されていました。かなめさんも写真に写ってますね。自分も山登りが好きで夏場だけ北アルプスとかに行ってましたが、冬山だけは世間や家族に迷惑がかかる可能性があるので登りませんでした。冬山の美しさは麓から見て満足してます。
Posted by: かなめ [ 2007年2月23日 11:28 ]
そうでしたね。いまいさんも登山が好きなんですよね。林業界にIターンする人には、けっこう穂高や南アの経験者が多いように思いますが、気のせいでしょうか。
昨年もはなしましたが、事業が安定して予定がたつようになったら、いっしょに秋の後立山でもいかがですか? 能登半島が見えて、きっと感動しますよ。
でもダメかな。いつも山から下りるとヘトヘトですもんね。
Posted by: こーりきー [ 2007年2月23日 18:01 ]
かなめさん
9月の初め頃に
立山・剱に
一年ぶりに行く予定しています。
もしいかれるようでしたら
日程会わせたいですね。
Posted by: かなめ [ 2007年2月24日 06:40 ]
おお、立山・剱ですか。こーりきーさん、それは反則ですね。刺激が強すぎました。入山はダム経由でしょうか。
タイミングが合えばごいっしょしたいですが、ゆとりをもった山行ができそうもないので、難しいでしょうね。
登山口のひとつ、大町というところに、古い友達が暮らしています。
山村起業とは呼べないかもしれませんが、いろいろと店をやったりして、未だ「これ」という決定打には至っていません。そうやって、自分探しを続けている人って、けっこういるんだろうな。