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そまびとたちの奮闘記

NPO法人信州そまびとクラブ。
山仕事をしながら、
林業のこれからの姿を提起します。

2006年11月29日

認証制度について考える機会がありました

 MSC(Marine Stewardship Council)という言葉をはじめて耳にしました。日本語では海洋管理協議会と表現されています。ここまで書くと、林業に関係している人の中にはピンと来る方が少なくないかもしれません。そう、FSC(森林管理協議会)を思い起こすのではないでしょうか。

 一昨日の晩のNHKニュースウォッチ9を見ていてのことです。前振りは近頃話題のマグロの漁獲制限からで、「おぉ、マグロも高嶺の花になるのだな」ぐらいの軽い気持ちだったのですが、本題の紹介で登場したMSC漁業認証を取得中の京都底引網漁連の話題から、グングン引き込まれてしまいました。

 自然からの恵みを、あまり形を変えずに利用する産業(回りくどい言い方ですが、おおまかに第一次産業ということでしょうか)の生産者が、自らの生産量を管理する手法と、消費者の行動が結びついているということを強く実感することができ、ボーッとしている頭をたたかれたような衝撃を感じました。

 ロンドンにあるMSCの公式サイトは英語表記なので、もっと手軽に知りたい方にはWWFの説明が良いかもしれません。またすでにMSCを取得している株式会社亀和商店さんのサイトも参考になりますよ。

 森林認証のことを何度も目にしているはずの自分が、このニュースを見たときにまず驚きがあり、感動があったということは、何を意味しているのでしょう。こんなことを書くのは恥ずかしいのですが、そこにはまず自然資源が有限であることへの気付きがあったのだと思います。
 京都の底引網漁師の皆さんの資源保護のための努力に、基本的にはFSCと大きな違いが無いはずなのに、はじめてのことのように感動すると言うことは、自分の中にまだこの認証制度自体への心構えが備わっていないことの証ではないか、というふうに考えました。

 このことは、論文や報告を読むことで知識として頭に入れてはいても、林業界に身をおく自分自身にとって、認証制度がその必要性や効果を体現できるものになっていない。逆に言えば、自分の関わっている世界がいかに持続可能性のアピールに乏しい世界であるか。自分自身、理屈をこねて情報を発信しようと努めてはいるが、この点については何ら判りやすいアピールをしていない。ということを意味しているようにも思います。

 ともかく、こういうアプローチを真剣に考えている人たちの生産している瞬間が、日本の漁船の上にも展開していること。それは単に「戦略」やら「付加価値」というレベルではなく、本質的にはもっと深刻なところに本来の目的を持っていることを、もう一度このブログに立ち寄ってくださる皆さんに考えていただきたく、報告させていただきました。

2006年11月25日

源流学習の日

 地域の方を講師に招いて、伝統文化や工芸にかかわる様々な体験活動をすることを通して、「源流の里を愛する子」(=学校目標)の具現化を目指す。というねらいで、地元の小学校で開催された学習のお手伝いをしてきました。

 私は「身近な野鳥たち」というテーマでの案内役だったのですが、自分が案内するよりも、受講生として参加させてもらいたい講座が山盛りで、学校が公民館と教育委員会に相談すると、これだけの講師が揃ってしまう「おらが村の底力」を実感した半日でした。

 いつも顔を見ている地域の大人たちが、家庭で接するのとは少し違う立場で、地元のことを伝えてゆくことができるのは、ひょっとすると田舎の特権になってしまっているのではないでしょうか。講座の内容は以下のとおりです。

川上連山の植物
山菜・きのこ
身近な昆虫たち
源流に棲む魚たち
---------------
川上の史跡
村の民話
源流太鼓
---------------
はりこしまんじゅう
レタス料理

 講座はすべて1年生から6年生までの縦割り参加です。これがこの講座のもうひとつの良いところでした。子供たちを見ていると、みんな実の兄弟のように面倒を見合っているのです。この仕組みを利用して、高学年の子供になにか役割を分担してもらえばよかったなと思いましたが、後の祭りでした。もういちどこういう機会があったらチャレンジしてみたいところです。私のように、小学校から転校をし続け「ふるさと」を持たない者の目には、学年が違っていても保育園の頃からいっしょに育っている地域の子供たちは、羨ましく映ります。もちろんそうした社会なりの悩みも含んではいるのでしょうが、それが贅沢な悩みのように思えるのはなぜでしょうか。

 そして、終わりの会での校長先生の言葉が印象に残ります。「今日、子供たちは自分で選んだ講座の内容を勉強したと同時に、そこで教える地域の大人たちの姿を見ていたはずです…」。
 地域の大人として自分はデビューできたかな?? 村暮らし12年目。アイターンした年に生まれた娘も、来年は中学生になります。

2006年11月24日

木花(きばな)が咲きました

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 本数調整伐の作業が着々と進んでいます。例年ですと、とっくに雪に降られている場所なのですが、先日テレビで放映された「the day after tomorrow」の予言どおり、と言うか示唆どおり、気候変動が予想を上回る速度で進行しているらしく、標高1600mの地点ではご覧のとおりまだ土が見えています。

 木についた水蒸気が凍る現象-たぶん霧氷の一種なのでしょうね-のことを、うちの村の山仕事の先輩たちは「木花(きばな)」と呼んでいます。稜線にかかった雲たちが後退してゆくと、今まで自分が居たことの証のように、雲の形そのままの木花の園が残ります。そしてやがてお日様の角度が高くなってゆくと、ハラハラと四角形の花びらのような霜の板が、木々から降ってきます。

 「この現場を早く片付けないと、次は雪を降らせるぞ!」北風の声に急かされながら、花びらの降り注ぐ尾根での作業が続きます。

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 17.5haのうち、図面内の太線の左側(西側)の作業が終わりました。図面右下の稜線は群馬県との県境線です。天気の良い日は前橋市にある群馬県庁がよく見えますよ

2006年11月18日

うれしいお便り3 六年西組のカラマツ~

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10月26日のブログに書き込んだ、地球温暖化防止の補助事業で、いっしょに木を植えてくれた担任の先生からメールをいただきました。


>おはようございます。
>記事(当ブログのこと)、読ませてもらいました。
>子ども達に作文を書いてもらったところ、
>「ぼくたちが大きくなったらまた見に来たい」とか、
>「楽しみにしている」とか書いてありました。
>「地球温暖化防止のためにうえたんだ」ということもかいてあり、
>なんだがうれしくなりました。
>杉山さんに関わっていただいたおかげと思っています。
>ありがとうございました。


 せっかくなので、雰囲気がわかるように感想文の画像だけでも掲載させて欲しいとお願いしたところ、たまたまPTAの会議で同席していたおとうさんから、文面の掲載OKまでいただくことができたので転記します。最初の種蒔きの時に、地球温暖化についての学習をした子供たちは、その後も忘れずに関心を持ち続けていてくれたようです。
 温暖化に限らず、環境問題を「託す」だけの大人であることに「居たたまれなさ」を感じます。しかも、広辞苑で「託する」を調べたところ、この言葉には”かこつける、ことよせる、口実にする”という意味もあることが記されていました。みなさんはどのように感じますか?

 
カラマツ2、3年物語 田中勇至

 6年西組のカラマツが、今日ついに森へ行く事になった。最初は種からはじまった。みんなでプランターに種を入れ、育てる事にした。目的は地球温暖化をふせぐため。二酸化炭素を木が吸ってくれるから温暖化をくいとめるらしい。

 そして1年がたち、芽が出てきた。2~3センチくらい。2年目、大きい芽では5~6センチになった。みんなでかんさつしてきろくしている。そして3年がたってようやく「夕日あたり」という所へ行く事になった。杉山かなめさんといっしょに、おなじ2~3年の、プロが育てたカラマツを植えた。すごく大きくて、ぼくたちのカラマツとはぜんぜん違っていてすごかった。

 そこでいよいよぼくたちのカラマツを植えるときがきた。プランター全部、いっきに植えた。大きくなるのは、あと30年後。早く育ってほしい。

2006年11月17日

起業の相談

 農林業での起業をめざす青年から相談を受けました。相談の内容は起業そのものについてと言うよりも、NPO法人(以下、このページではNPOと略します)として設立する可能性についてのものがほとんどでした。

 その他の具体的な質問は「林業面での起業にあたって既存の事業体との軋轢はないか。良い関係を保つためにはどうすればよいか」といったもので、おたがい、山仕事が終わってからの2時間ほどを、みっちりと農林業の将来のために注ぎました。

 この種の相談や質問で最も多いのは、(今回のパタンは違いましたが)NPOを起業の形のひとつとしてだけ考えて、他のたとえば株式会社や企業組合、有限会社との比較に注目したものです。しかし、稼いで食ってゆくことだけを目的にするのであれば、NPOを比較の対象にすること自体が無意味だと私は思うのです。なぜならばNPOが生まれてきた背景には、社会のさまざまな限界を乗り越えるという目的があったからであり、「こんな活動(もっと端的に表現すれば「人たち」)があれば良いのになぁ」という希望が、その起業の原点だからです…。


 とは言いつつも、この日「NPOのデメリットは何ですか?」と問われて、「しいて言えば、予算と報告の義務の煩雑さかな」などと矛盾した答えをしている自分に苦笑もしました。なんの禊(みそぎ)も無く、法が示すところの目的にだけ合致していれば法人格を得ることができる、という柔軟性の高い制度が用意されているのですから、自分たちの活動の公益性を訴えるのであれば、予算や報告などは義務なのです。それをデメリットに挙げてしまうこと自体、まだ自分の考え方が甘いことを自覚しました。


 他にも、相談と称して実は自分のためになったことがたくさんありました。会話をしながら「日本の社会において、農と林は本来分けて考えられるものではなかったはず(ある意味では漁も一体で考えるべきかもしれない)」ということを改めて感じたこともそのひとつです。私は10年ちょっと前まで、第一次産業とまったく接点を持たなかったせいか、農業と林業は異なったものという観念を未だに頭のどこかに残しています。今回はそのことを強く叱られたような気がします。


 そして、農業問題のことを何も知らない自分が、とても恥ずかしく感じられたできごとでもありました。 青年様に感謝。

2006年11月13日

山村留学生の収穫祭

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都市の子供たちが、親元を離れて山村で生活するという活動があることをご存知でしょうか。私の暮らす川上村のふたつ隣の北相木村では、この山村留学制度を受け入れるようになって20年目を迎えました。昨日は、この山留センターの年に一度の収穫祭の日で、日頃から活動に参加させてもらっている関係で、餅つきの手伝いに行ってきました。


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地元の小学生と留学生がともに学ぶ太鼓「からまつ太鼓」の発表もありました

 北相木村では、小学校1年から6年生までの留学生を受け入れていて、子供たちは、山村留学の草分けである育てる会が運営する山村留学センターと、里親さんと呼ばれる地元農家に交代でお世話になりながら、田舎の生活と自然にドップリと浸り、農業以外にもヨットやスキーなど、様々な体験をしながら成長してゆきます。

 過疎の進む村で、小学校に通う児童数が増える、というメリットもありますが、それ以上に、子供たちや親が心に「ふるさと」を持つことや、都市と山村の交流が生まれること、そして稀には、この留学をキッカケに親子ともどもアイターンということも起こっています。

 実は一昨年、山村に暮らしていながら、私の娘もこの山村留学に一年間お世話になったのです。通常、留学生は都市に暮らす子供たちなので、これははじめてのケースだったようです。私とセンターの関係は、それまで野鳥観察を通しての子供たちとの交流だけだったのですが、山留生父母OBとしてのおつきあいや、からまつ太鼓を縁に、村の人たちとおつきあいさせてもらうようになり、一泊二日の収穫祭は実に楽しいものでした。

2006年11月 9日

うれしいお便り2

8月22日のブログに書き込んだ、DIY情報誌の取材の際にお世話になったカメラマンさんから、以下のようなメールをいただきました。なんでも、糸鋸作家の方の取材に出かけた際に、その作家に地元の生産者からカラマツ材を使うようお願いがあったことを聞いたとかで、


>・・・気がつけば、林業に携わる人の側からの
>「森林の経済価値」へのPRは、確かにあるのだなぁ、と、
>気づきました。
> 森林に市場経済を結びつけるのには抵抗感があるけど、
>人工林も含めた森林の経済価値について、少しでも多くの人に
>振り向いてもらわないと、今まで時代のご都合に振り回されて
>きた不運な日本の森林を、健全な状態に戻せないんですね。
>とにかく、杉山さん、現場の人間として「がんばって下さい」
>応援します!!

 とのこと。とてもありがたい言葉であると同時に、私たち林業関係者がいかに自分たちの生産している「木」の売り込みを怠っているかを、改めて感じることのできる内容でもありました。また「森林に市場経済を結びつけることへの抵抗感」も、おそらくは現代社会のかなり多くの方が普通に持っている感覚でありながら、林業関係者がそれへの配慮を意識できていない部分であり、起業への大きなヒントを含む問題ではないでしょうか。

 そして、8月に私たちの取材に来てくださった際のことを、ご自分のホームページに気まぐれ撮影日誌と題して紹介してくださいました。
 
 この時の記事「蘇れ、そまびとたちの森」が載った本ドゥーパ!EXは、現在発売中です。記事の中では、カラマツのことをたっぷりと宣伝させていただきました。

2006年11月 7日

本数調整伐

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 保安林での間伐作業がはじまりました。現在保安林は全国で約1,100万haあり、中でも水源かん養を目的にしたところが全体の約7割を占めています。今回は、長野県佐久地方事務所の発注により、この水源かん養保安林に指定された場所の手入れを行います。

 保安林の機能を健全に保つために行われる、いわゆる間伐は「本数調整伐」と呼ばれています。今回受託した面積は合計17.53ha。作業に入る前に、全体面積に対して一定の割合で立木の密度の確認作業を行います。画像のピンクテープを巻いた木が、確認を行った標準地の中の木で、調査したおおまかな場所を図面に記録するためにGPSを利用して位置を記録しているところです。

 ご覧のように笹が大人の背丈ほども伸びているため、木から木への移動が容易ではなく、シカたちの歩いた跡が頼みの綱。標高1600mある現場なので、雪が降るまでの勝負です。

2006年11月 5日

愉快な山仕事講座の同窓会

 高さ約20mのヒノキの間伐と、集材、そして製材までをセットにした、ステップアップ講座が行われました。
 毎年、佐久市大沢財産区の山をお借りして行われる「愉快な山仕事講座」のことは、9月11日にご紹介しましたが、そこに参加した皆さんで構成される同窓会と共同で、毎年何回かステップアップ講座が行われます。

 今回は「もっとチェンソーの取り扱いに慣れたい。より多くの伐倒体験をしてみたい。」という方を中心に、そまびとクラブが主に安全確保面でのバックアップと、集材、造材、簡易製材に関する情報提供を行いながら、佐久市大沢新田にある旧分教所に泊まり、顔馴染みとなったみなさんとの共同炊事による楽しい二日間を過ごしました。


 こうした講座に、本業を離れ様々な業種の人々が参加していることは、そまびとクラブにとって多様な方との出会いの機会でもあります。また、本講座では伝えきれなかったことを確認し、次の講座へ活かす機会にもなっています。

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長野県佐久地方事務所が貸し出している簡易製材機、ハスクバーナのホリゾンを使って、自分たちで集材した丸太を、希望のサイズに製材しているところ


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本来の順番とは逆ですが、板に挽いた材の皮むきも、その場で行いました。さて、何ができるのでしょう??

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そまびとたちの奮闘記 「そまびと」とは「きこり」のこと。現代のそまびと=技能職員たちが起業し、模索しはじめました。

お知らせ

要林産のホームページ somabito.jp をどんなものにしようか、現在思案中です。なにか良い案があったら、ぜひコメントに書き込んでください

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