起業までの道のり(まずは自分のこと)
「お前のことなどどうでも良い」と言われてしまいそうですが、ひょっとすると「これから田舎で暮らしてみたい」という人の参考になるかもしれないので、身の上話しからはじめることにします(長くなりそうです)。
神奈川県川崎生まれの東京育ち。幼稚園で、東京オリンピック。小学生で大阪万博を見に行った、重厚長大、高度経済成長のいちばん濃密な時間の中で育ちました。そんな環境ではありましたが、少年時代を過ごした神奈川県の田舎町での原体験-クワガタ採りや、川遊び-が、40年後の自分の核となっています。今でも基本的に昆虫少年(中年)のままです。
なんとか大学を卒業し、放浪生活の後に、都内と近郊でサラリーマン人生を送りました。肌に合わずに退職した会社もあれば、働き甲斐があり快適だったにもかかわらず、業績悪化に身の危険を感じ、慌てて退職した会社もあります。サラリーマン生活に疲れを感じていたとき、求人誌の全国森林組合連合会のページが目に飛び込んできました。「こんな生き方もあるな」という思いが、どこかで目覚めます。
学生時代から知識として漠然と感じていた「環境問題としての日本の林業問題」を思い出させる公告。そのことを考えているとき、趣味の山歩きで知り合った仲間に山スキーに誘われ、十年ぶりぐらいで出かけた信州の山の美しさが追い討ちをかけました。「自分は山が見える場所に居ないと死んでしまう!」などと書くとおおげさですが、そんな心境で、現在暮らしている村の森林組合の面接を受けることにしました。
森林組合での採用が決まってから働くまでの間に、ひとつエピソードがあります。
まったく畑違いの、なんら専門教育を受けたことのない分野への転身でしたから、私は、面接の担当者(この人が、後の上司になるわけですが)に「事前に何か勉強しておくことはありませんか」と尋ねました。解答はあっさり、「特にないね」というものでしたが、今考えると、このあたりに大きな認識の違い、あるいは、危機感の差があるように思います。
もしも現在の自分が同じ質問を受けていれば、森へかよう道(内山節著)、新たな森林管理(藤森隆郎著)、森と人間の歴史(ジャック・ウェストビー著)等を読んでおくよう、即座に勧めたことでしょう。森林と人の関わりは太古の時代から続いています。その知識や技術は海のように深く広い…。勉強しなければならないことは、いくらでもあります。(つづく)