09_オヤジとオイは繋がっとるけん・高月篤さん(東彼林研会長/長崎県波佐見町)
こもれびが射すスギ山の林床一面を覆うのは、10万本にも及ぶハランの株だ。生け花の材料や、料理の飾りとして需要があり、市場が確保できれば年間を通して出荷できる。植えて3、4年で出荷可能であり、施設費もかからず、生産調整もしやすいという魅力がある。
東彼林研では会で持つ共同圃場約1町歩にアオ、シマ、アサヒの3品種を混植。会員全員でローテーションを組み、安定出荷の仕組みを作った。刈り取りには日当も出している。
この日集まったメンバーの方々は山を見るなり、選り分け方などについて熱心に意見交換を始めた。斑の入り方に個体差があり、仕分け次第で市場での値段も変わる。シイタケ農家やシキミ生産などそれぞれ家業としている専門はあるが、熱い口調から、共同のハラン栽培も同等に力を入れている事が良く解る。「うちの会はおおらかな人が多くて和やかなのが特徴たい」と会長の高月篤さん。技術や知識は全員で共有し、作業の効率化と高収入を目指す。「ただし、あくまで主目的は良い山を作る事と言うとるとです」と篤さん。
ハランの生育を左右するのは光量、風の通り具合など。つまり、上層木の適切な間伐が良いハランを作るのだ。30年前から栽培と産地化に取り組んだ実父の久雄さんは、林研の初代会長であり、長く林研を引っ張ってきた。長伐期大径木施業を目指し、木を伐らずにいかに山から収入を上げるか、という課題に対する答えが、ハラン栽培だった。その遺志を継いだ篤さんも、より良い山作りを大目標に据えている。現在は16町歩の持ち山のうち1町歩にハランを植栽。他にセンリョウなどを植えている場所も。
「オヤジとオイは繋がっとるけん、親父の夢を叶えるのもオイの仕事。1町歩でもいいから、人が見本にするような山を作りたい」と語ってくれた。
(『林業新知識』2007年10月号より/絵と文・長野亮之介)