06_好きだから続けてこられた・佐々木徹さん(いせしま森林組合作業班/三重県度会町)
大方の伐倒を終えた約3町歩のスギ林から、スイングヤーダのウインチで数本ずつ丸太が引き出される。佐々木さんが、玉切り箇所のマークが漏れた丸太の計測に取り掛かると、相棒が素早く機械を操作し、作業しやすく木を持ち上げた。「機械を使った連携作業もだいぶ馴れてきたところ。うち(いせしま森林組合)ではこれまで搬出作業はなかった。利用間伐はこの春から若手の3名を中心に始めたばかりなんです」と佐々木さん。当組合では一年生だが、山仕事は10年の経験を持ち、搬出作業のリーダーとして現場をまとめている。「皆が知恵を出し合い、より効率的で安全な方法を模索しながら作業できるのが楽しいですね」。
大学卒業後、都内で商社の営業職に就いた。仕事は好きだったが、ネクタイを締めてコンクリートの街を歩き回る生活に次第に疑問を持つ。28歳の時、知人の薦めで造園業への転職を決意。勤め先の岐阜県にはそれまで縁は無かったが、迷いもなかった。しかし半年後、諸事情のため再度転職に。木に携わる仕事という篩(ふるい)に残ったのが岐阜県恵南森林組合だった。就いてみて、山仕事の奥深さに惹かれた。技術から段取りまで、ゼロからの修行の場。待遇に不満はなく、土地にも愛着があったが、10年を経た昨年、様々なタイミングが重なって夫人の実家がある三重県に移住した。
伊勢志摩は海のイメージが強い土地だが、組合の管内に6万町歩の山林を擁する森林地帯でもある。漁業を営む義父の近くに住み、現在は海辺から山へ通勤する生活だ。「ここに来て、あらためて林業の大切さを知りました」と佐々木さん。土地柄、海と山の密接な繋がりを折に触れ感じている。
林業の面白さを知るに連れ、仕事の実体が世間に知られていない事も痛感する。まだ幼い2人の娘が父親の仕事を誇れるよう、いずれ若者が林業に憧れるような時代になって欲しいと切に願う。その為にも、まず足元の森林組合の業績を上げ、仕事を充実させていくのが当面の目標だ。
(『林業新知識』2008年8月号より/絵と文・長野亮之介)