04_山離れを少しでもくい止めたい・深田文子さん(深田林業/山口県長門市)
全体で22町歩ほどの林地に作業道を作りながら伐倒を行う現場。その一部、五反歩ほどの谷あいにハンマーの打撃音が響く。柄を握る深田文子さんの腕の一振り毎に矢が打ち込まれ、ほどなく胸高直径約50㎝のスギが、鈍い音を立てて横たわった。道具をチェーンソーに持ち替えた文子さんが手際よく枝払いを始める。夫の伸治さんは次の伐倒準備を始めた。「山にはいろんな仕事があるでしょ。機械さえ使えれば、女性に出来ることはいっぱいあります」と文子さん。
山形県の実家が農林家で、小さい頃から山に親しんできた。首都圏に就職した後、職場結婚した夫の郷里へ移り住む。嫁ぎ先は林家ではなかったが、地元で出来ることを夫婦で模索するうちに山仕事に辿り着いた。「山口に移住した時は、何をして暮らしていくか決めていなかった。もともと山形の家業に反発して家を出たんですけど、結局林業に就くのが私にとって自然な成り行きでしたね」。
1985年頃から林業機械に設備投資を始め、作業道開設も手掛ける。仕事が増えたのをきっかけに、97年に有限会社深田林業を立ち上げた。次第に生活に占める比重が大きくなってきた林業を、将来に渡って続ける覚悟が出来たのはこの時からだ。
現在の業務は主に素材生産と林道開設。林業機械を扱う必要から様々な資格を取得し、県内で数少ない女性青年林業士にも認定された。「実は機械オンチなので、集材機とか玉掛けとかの試験は泣きながら勉強しましたよ」と文子さん。
山仕事は性に合っているが、女性の同業者が少ないのが玉に瑕(きず)。それを補うように積極的に地元の会合やイベントに関わって仲間づくりを心掛けてきた。6年前に「遊林クラブ」を結成。自然体験イベントや、工作、燻製作りなど、仲間や子どもたちと山を楽しむ活動に意欲的に取り組む。山に関心のない山主が多いなど、進む「山離れ」を、少しでもくい止める手伝いをしたいと考えている。
(『林業新知識』2008年4月号より/絵と文・長野亮之介)