03_林業を子どもが憧れる職業にしたい・東京チェンソーズ(林業事業体/東京都桧原村)
岩登り用のハーネスを着けた井上さんが、チェーン式の登降機で軽々とヒノキに登る。別の木ではすでに樹上の水出さんがチェーンソーで枝を打つ。桧原村は平均傾斜40度という急傾斜地。樹上の作業は実際以上に高度感があるが、2人の作業には安定感がある。「安全確保には特に気を遣い、道具も工夫しているから、安心して作業ができます。動力を使う時は、木の上だろうと耳当てとゴーグルは必需品だし、効率を上げるために伸縮式の枝打ちノコを使うことも」と代表の青木さん。
東京チェンソーズは設立2年目の民間林業事業体だ。メンバーの平均年齢は32歳。以前の職歴も自動車整備、アパレル業界、雑誌編集など様々。4人とも緊急雇用対策のほぼ同期生で、東京都森林組合の桧原支所に所属していた。今の林業事情の中で独立して食えるのかどうか悩んだが、力を試したい気持ちが先行する。やる以上は、自分たちが納得のいく制度を目標に掲げ、そこに向かって努力することで一致した。その一つが徹底した安全管理だ。道具の工夫を始め、毎朝の朝礼でKY(危険予知)法を実践している。仕事日以外に毎月会議日を持ち、作業環境の改善を話し合うのも重要だ。
月給制とし、設定額を稼ぐために効率化を図るのも特徴。現場毎に班長を決め、責任も分担する。作業のデータは必ず残す。最近では、桧原の山仕事で行われてきた山割り(持ち場を区画割りして担当を決めて作業。能率に会わせて賃金を考える)を試行中だ。作業は造林主体だが、効率を上げれば造林に特化して生き残れると考えている。
山仕事は面白く、意義のある仕事。それなのに一般の人に林業の存在が知られていない現状が歯がゆい。将来は、林業に子どもたちが憧れるような土台作りをしたい。そのためにも、経済的、作業システム的にもしっかりとした環境を作り、仲間を増やすのが目標だ。
(『林業新知識』2008年6月号より/絵と文・長野亮之介)