10 羊とクリは相性がいいよ・塩見均さん(クリ園経営/京都)
塩見さんのクリ園訪問は、モコモコの毛を纏(まと)ったガングロ(顔黒)な動物との柵越しの御対面から始まった。出迎えてくれた3頭のサフォーク種の羊は、5月上旬から9月下旬までの“草刈り要員”。この試みは、羊の持ち主である府畜産技術センターの提案で3年前から実施している。羊たちの旺盛な食欲のおかげで、草刈りの手間は3分の1。糞は地味を肥やす。ただし、樹高が低いと、クリの葉まで喰われてしまう。
塩見さんは最初から樹を高く仕立てて来た。11月から3月の間、毎日60頭分の生牛糞を肥料として園内に撒く。糞を積んだトラクターが、満遍なく敷地内を走るためには高樹高が条件だった。「低樹高仕立てに比べて多少収穫が手間でも、それ以上の利点がある。周囲にも勧めるけど、なかなかやらないね」と塩見さん。
現役時代は府の林業改良普及指導員だった。クリが「林産物」になったのは昭和47年。それ以前の「農産物」時代とは指導内容にも違いが求められる。試験場に通い、手探りしながらの普及が続いた。15年前にクリ園経営を始めたのも、自分の技術を磨くためだ。
退職後、クリ園経営と平行して山仕事も請け負った。仲間が亡くなって現在は休止中だが、間伐と枝打ちを中心に、地域の山を随分きれいにした自負がある。「自分が手を掛けた山は可愛い。スギ山でもクリ園でも、思いは同じ」と言う塩見さん。「クリも奥が深くて未だに終着駅が見えないけど、その分やり甲斐がある。いかに甘くておいしいクリを作るか、こだわり続けたいね」。(絵と文・長野亮之介)