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トップページ > 農山村の背景情報 > 山で生きる・森をつなぐ仕事<part.3>

農山村の背景情報

09 手間はかかっても安心を届けたい・松田喜代美さん(女性林研「しらゆり会」会長・シイタケ生産/福井)

09_松田さん.jpg スギ林の林床に、微妙な曲線を描いて並ぶシイタケのホダ木。なぜか魚附き林を泳ぐ小魚の群を思い浮かべた。「今年は乾燥シイタケも含めて1万5000本程(種コマを)打ったかな・・・」と喜代美さん。隣で頷くのは、義父でシイタケ栽培の師匠でもある由美津さん。
 昭和40年に始めて以来、一貫して原木栽培にこだわる。喜代美さんもその方針を受け継いだ。年間雇用のパートさんもいるが、基本的に今は舅と嫁の二人三脚。自営業のご主人はシイタケには関わらない。「旦那よりも、実の親よりも、爺ちゃんと一緒にいる時間が長いですよ」と言うとおり、何気ないやりとりが阿吽の呼吸だ。
 隣町の商家から嫁いで30年になる。育ちと違う環境で、子育てと農作業、そしてシイタケ生産と、覚悟していた以上に忙しかった。今やキノコは我が子のように愛しいが、「最初はどれだけ逃げて帰りたかったことか」と笑う。
 30代に大病を経験した。死と隣合わせの時間を経て、健康にはより留意するようになった。手間はかかっても、自然で安全に食べられる物を作りたい。その思いが原木栽培に繋がる。4年前、農業関係の仲間と始めた対面販売の場では、原木シイタケの味の良さだけでなく、安全性もアピールしている。5年前からは女性林研を立ち上げ、ウドの林内栽培に取り組む。こちらはまだ実験段階で、「仕事と言うより楽しみ」と喜代美さん。持ち山に拓いたウド畑には、健康そうな株が育っていた。(絵と文・長野亮之介)

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