01_恵みの山の森番になりたい・福田哲也さん(森番・里山コンサルタント「かけす」主宰)
小雨に濡れた雑木林は、何となくケモノの気配が濃い。「こないだは、すぐそばでクマがじっとこっちを見てたよ。どうも俺の顔を覚えてんだな。チェーンソーを回したら逃げていったよ」と福田さん。所有者の不動産会社から自由に使うことを許された約33町歩の山は、そもそもケモノ達の領域だ。炭焼き窯などがある一角が、かろうじて人の存在を主張している。「炭焼きはまだ遊びのレベルだ」と笑うが、窯も番小屋も福田さんの手作り。昔の背負子を復元したものを見せてくれた。
下草を刈り、除伐をした一帯に意図的に残された幼樹は、"役に立つ木"だ。キハダ、ケヤキ、ホオ、ナラなど、稚樹で確実に見分ける。「一番自信がある技術は刈りっ払い。俺が作業したあとは、ちゃんと良い木だけが残る。これだけは人に任せられないな。それができるようになった時、森番になれるかなと思って独立したんだ」。
6年通った大学を事情で中退し、作家のC・W・ニコル氏の付き人になった。ニコル氏が所有する雑木林は、元炭焼きの親方が管理している。親方の手伝いも、福田さんの仕事の範疇になった。9年間の付き人生活の中、平行して親方に弟子入りしたような格好だ。元々は九州の海育ち。自然とのつきあい方は心得ていたが、山の暮らしは新鮮だった。山の見方、手入れ、炭の焼き方などを一から学んだ。
平成10年、結婚を機に独立。里山コンサルタント「かけす」を立ち上げ、雑木山の手入れを主体に、人工林も含めて山仕事全般を手掛ける。別荘地の雑木林管理や薪の生産が主な収入源だが、いずれは炭焼きも収入に繋げていきたい。借りている山で行われる自然学校の講師やガイドも務める。「ちゃんと手入れをすれば、山はたくさんのものを恵んでくれる。そういう山を作る森番になりたいんだ」。 (絵と文・長野亮之介)