山で生きる・森をつなぐ仕事<part.2>
一窯ごとに炭は違う
山岡トキ子さん(炭焼き名人/山口県)
「今の窯は三基目。一度に20俵くらい焼けるかねえ。毎月焼くから、窯を遊ばせておくことは無いね」と山岡さん。窯場の小屋掛けの柱には、名言や人生訓などがあちこちに。書は、多才なトキ子さんの趣味の一つ。達筆で書かれた「やればできる」という文句が目についた。「早くに夫を亡くし、女1人で子育て。それ自体が挑戦じゃったからね」。
若くして未亡人となった当時、長女がまだ11歳。トキ子さんは森林組合作業班で働き始める。19で嫁いで夫から倣い覚えた炭焼きや山の手入れが、一番身近な稼ぎ仕事だった。以来退職する5年前まで女性班の班長。植林から保育、間伐まで手がける。一時的に出稼ぎしたこともあるが、やっぱり山仕事が一番性に合った。
菊川町林研には昭和41年の創設当初から所属。全国の有名林業地に研修旅行しては、その成果を地元に還元する。そうした活動から生まれたのが「緑の会」。県主催事業から発展した女性林研だ。講師を務めた縁で参加し、陰に日向に会を牽引してきた。活動は多彩。「土地を借りて、女性が将来何か作れるような樹種を植えてみたり。もちろん炭焼きも」。
森林組合退職後は炭焼きに専念。原木の伐り出しから焼成まですべて1人作業だ。最近は竹炭や飾り炭の制作にも余念がない。果実やシュロの樹皮等何でも炭に焼いてみる。「炭焼き経験は半世紀以上。でも毎回試行錯誤。窯を開ける時はドキドキする」と謙遜するが、周囲の評価に従って「炭焼き名人」と称号を付けさせていただきました。
(絵と文・長野亮之介)