山で生きる・森をつなぐ仕事<part.2>
山は手間がかかるから楽しい
高波和雄さん(農林業/長野県)
傾斜のきつい林道を走ると高波さんの所有林に至る。一帯約12町歩だけ緩やかな地形になっており、別の山に来たようだ。地の利を生かし、100m以上/町の高密度に作業道を開いた。これまでに間伐を三度。成長の良い林分では10mまでの枝打ちをしている。
酪農なども手掛けていた高波さんが、集中的に山仕事を始めたのは約30年前。薪炭林だった山に、3〜4年で一気に新植した。当然ながら保育作業も一斉に時期を迎える。「下刈りだけでも14年くらいかかったな。昭和58年の豪雪では大被害を受けたが、泣きながら雪起こしをしたよ。若いときは仕事ばかり。余裕が出来たのはここ数年だね」。
18歳の時、北海道に渡る船上で台湾の農林関係の役人と知り合った。日本の山作りは素晴らしく、真似したくても出来ないと語る異国人の言葉に感銘を受けた。このとき心に刻まれた「素晴らしい日本の山」を、何とか維持したいと言う思いが、今も高波さんの山仕事の動機になっている。誰もが一次産業に背を向けたバブル期に、あえて山仕事に本腰を入れた理由の一つでもある。「山は大変だって言うけど、手間を掛けるのが、生きることの基本。手間が掛かるから楽しいんだよ」と高波さん。
最近簡易製材機を導入し、曰く「遊び」で車庫などを設計、施工中だ。ここ4〜5年は毎年ヒマラヤトレッキングに行き、異国の厳しい環境も目にする。翻って豊かな森林資源がありながら生かし切れない日本に、思いも複雑だ。(絵と文・長野亮之介)