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農山村の背景情報

山で生きる・森をつなぐ仕事<part.2>

山仕事はバランス感覚が大事

武田邦弘さん(素材生産業/大分県)


07_武田さん.jpg 自宅の裏山にある4町歩弱のスギ林に、邦弘さんの山仕事の歴史が詰まっている。間伐が行き届いた林内は明るく、成長もすこぶる良い。「品種はオビ、アヤ、ミスギ(地元での通称)の3つ。俺の生まれた年に親が植えちょってくれた記念植樹なんよ」と武田さん。大分の農林高校を卒業後、家業のシイタケ作りに就き、同時期に山の手入れを始めた。所有林約100町歩のうち、この山にはことさら繁く足を運び、これまでに4、5回の間伐をした。「初めての間伐の時は、全部人力で出したな。自分で木を売った初めての経験やった」。
 平成に入ってシイタケをやめた。中国産が出回り、値が崩れたのだ。30歳で迎えた転機に、あらためて自分に向いた仕事として、山を選んだ。「雄大な自然の中でする仕事が合っとるんやな」。間伐作業が環境づくりと認められはじめたことも、決意の追い風になった。宮崎の林業会社で技術を覚え、独立してからは一人親方で今に至る。自分で手掛けた「記念植樹の山」を目標に、長伐期・大経木の山づくりを心掛ける。
 一方で、仕事ではできない山づくりも試みている。「うちの山は昔から雑木が多かったから、あまり針葉樹ばかりの山に入ると息苦しいね。そういうバランス感覚なんよ」と武田さん。スギ大径木の複層林と、サクラ・モミジ、クヌギやケヤキなど雑木が混じった山を理想に、自分の山ではなるべく広葉樹を残す施業も。「広大な庭作りのつもり」という武田さん。100年後の様子を思い描き、山に通う。 (絵と文・長野亮之介)

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