山で生きる・森をつなぐ仕事<part.2>
シイタケは原木作りが肝心
佐藤洋一さん(乾シイタケ生産/群馬県松井田町)
佐藤家のすぐ裏山に、50年生のスギ林がある。傾斜のきつい北向きの斜面が、シイタケのホダ場に使われていた。直径30㎝ほどの太さの木も整然と並べられた様は壮観だ。菌を打った部分が盛り上がり、シイタケの発生も間近い。
ところどころホダ木の樹皮がはがされているのは、サルの食害。サルとの戦いに疲れてシイタケ作りを放棄する農家も多いが、佐藤さんは電柵と爆音機でしのいできた。「シイタケ作りは山間地ならではの仕事。サルと喧嘩しながらでもこだわっていきたいね」。佐藤さんはタラノメや山ウドも山の斜面で露地栽培で育てる。
年間約3万駒の菌を打つ。約6000本のホダ木は主にクヌギ。ここ5、6年は植林した自家原木で間に合うようになり、前にも増してホダ本の管理に力が。原木を葉枯らし乾燥させて堅(かた)ホダに仕立てる。菌が回るのには時間がかかるが、傘に厚みのあるしっかりしたキノコができる。「シイタケは木の力をもらって育つんだから、ホダ木作りが勘所」と佐藤さん。原木の伐期には特に気を遣う。目安となるヤマザクラの紅葉具合を見定めるため、去年は3、4日山に通った。
前回より良いものを目指して毎回工夫を凝らす。でも、どんなに手をかけても自然任せ。2年後に菌が出始めるときのドキドキする気持ちがシイタケ作りの醍醐味だ。 (絵と文・長野亮之介)