山で生きる・森をつなぐ仕事<part.2>
人の繋がりが材を生かす
桑原和男さん(㈱桑原木材工業経営/岐阜県)
桑原さんの案内で訪れた現場は85年生のスギ・ヒノキ山。約20kmの村有林を落札し、皆伐を進めている。進行中の約4.5haの区画では、架線集材された丸太をクレーンで土場に積む作業が行われていた。トビを握った桑源さんは、慣れた様子で嘴先(ざき)を丸太に打ち込む。現役のトライアスリートだけあって、身のこなしも軽い。「車には作業服と背広を両方積んで動き回ってますね」と桑原さん。
父が創業した製材所の2代目。東京の大学を卒業後、トラックの運転手から見習いを始め、使い走りをしながら山仕事を覚えた。当時は材価が高い。主体は製材事業だが、効率的に材を流通させるために、素材生産から住宅建設まで、一貫して関わる父の手法を踏襲した。200町歩の持ち山もあるから、木の流通事情が全て我が事として解る。「山で木を造材するときに、住宅での最終的な使い方まで想像しないと応用が利かないです」。
12年前からヘリ集材を積極的に活用。地形が険しい県内で、管理放棄された奥山の間伐材を有効に利用しながら、大径木の針広混交の山へと導く技法として着目した。45年生以上の林分である程度まとまれば、新たに林道をつくることに比ベコスト削減にもつながる。「一本一本違うものを無理に規格化したせいで、木を生かす知恵が廃れた。育てる現場から住まう現場まで、木に関わる人がもっと密接に繋がり、木とつきあう知識を共有したい」と桑原さん。山仕事体験や伐採現場見学ツアーなども受け人れる。「長い時間をかけて育てた木を生かすには、不断の努力が大切。マラソンと同じです」。(絵と文 長野亮之介)