山で生きる・森をつなぐ仕事<part.1>
森をつくるログビルダー
林幸一さん(林業/高知県)
林さんが自力でログハウスを建てたのは4年前。約10人の仲間と半年がかりの施工だった。柱の間に横木を入れていく工法で、壁の上部は土佐漆喰の白壁造り。ヨーロッパの古民家のような趣だ。持ち山から伐り出した生木を直に組んだが、思いの外、歪みは出なかった。曲がった木も適材適所に生かす。林さんのこだわりを象徴するのは、90年生のスギの丸太に踏み板を組み込んだ階段。手すりには根曲がり材のカーブが丁度良い。地元の木だから、規格外の材も生かせる。遊び心で仲間と始めた家造りは、幸一さんの山づくりの方針表明にもなった。
22才で高知市からUターン。実家が手がけていたイチゴや米ナスのハウス栽培を6年間行う。30歳を前にシイタケへの転換を図る。それが山に目を向けるきっかけだった。約100町歩の持ち山は手を入れるだけ変わる。機械を使えば夫婦で仕事にかかれ、時間にも追われず自由に出来る。平野部育ちの鈴子夫人にも山仕事は新鮮だった。1年単位の結果に追われる農業に比べ、ゆったりした山の時間も性にあった。「長伐期を目標に、慌てずゆっくり、気持ちのいい針広混交林をつくりたい」と幸一さん。
今は道づくりに力を入れている。仲間と構想中の産直住宅システムにも山の基盤整備が重要な役割を果たすはず。山中で顧客に直接選んでもらった木で家を造りたい。そのためにも山には、繁く足を運んで足跡を残す。一方でより多くの仲間との連携を図っている。ログハウスはその拠点になりつつある。 (絵と文/長野亮之介)