山で生きる・森をつなぐ仕事<part.1>
ハチミツが採れる里山をつくる
佐伯元さん(「ビー・フレンド富山」主宰/富山県)
海岸に近いヒマワリ畑に、西洋ミツバチの養蜂箱が8組設置されている。上下二段で約3万匹が営巣可能。「今は群の数を増やしているところ。一人で300箱くらいまでは管理できます」と佐伯さん。「金になるから、ミツバチの飼育方法はあまり公開されない。でも、僕は林業家としてハチを飼っています。業界のしがらみに囚われず、技術を広められる」。
1年前、山梨で林業の現場に就いていた時、養蜂を知った。広葉樹の花はハチの蜜源だ。ならばハチミツは林産物ともいえる。早速住み込みで養蜂家に弟子入りし、半年で概ねの技術をマスターした。
佐伯さんのキャリアは多彩だ。東京外国為替市場のディーラーから、自然食品の宅配業界に転職。木造住宅を扱う部署を希望した。住宅はヒトの一生で一番大きな買い物。金の流れを含め、その有り様に興味を抱いたからだ。住宅を知るほどに林業に関心が深まる。建築事務所に入り設計を学んだ。ログハウスの建築家として独立し、イタリアのログハウスメーカーの代理店も務める。足下の山を何とかしなければという思いから就林したが、林業を取り巻く閉塞的な状況にとまどいを覚えていた。
「環境林整備が謳われる今だから、蜜源の山作りに現実感がある。建築材生産は大切。一方で養蜂を武器に、里山作りをしながら生活できる林業があっても良い。ハチを受粉用に農家に貸し出すなど、農業との連携もできる。僕はそれを目指します」。今春、市民グループ「ビー・フレンド富山」を立ち上げた。里山作りの志に共鳴するハチ仲間を軸に、25町歩ほどある持ち山を、蜜源の里山に手入れしていくのが当面の課題だ。 (絵と文/長野亮之介)