山で生きる・森をつなぐ仕事<part.1>
ツバキの森で島起こし
高田義土さん(椿油製造・高田製油所/東京都大島)
機械で砕いたツバキの実を蒸し上げ、樽に移し、搾油機の下へ。機械と二人三脚の義土さんは、原料を運び、突き崩し、重い容器を上げ下げする重労働で汗だくだ。天井のドラムから皮ベルトが機械に動力を伝える。樽を乗せた鉄板が油圧で上昇し、石の凸型に圧着。そのまま2秒ほどで、樽の隙間から鶯色の液体がドッとあふれ出す。トロッとした動きは生き物のようだ。促され、まだ暖かい一番絞りを口にした。おいしい。意外なほどあっさりしていて香りもほのか。「椿油で揚げた天ぷらは絶品ですよ」。
高卒後渡った東京から3年半前に帰郷。家業に就かぬまま2年。その間、途切れていた人脈を再構築し、家業を取り巻く環境を観察していた。三代かけて築いた信用で販路は安定。従来しなかった二番絞りで石鹸作りなど、商品開発も順調。問題は原料の確保だ。防風林として島中に植えられたヤブツバキは今や放置され、ナリキ(結実が良い木)を探すのにひと苦労。熟して落ちた実の収穫に人手は少なく、人件費も高い。
「中国産原料は安いけど、うちは国産。将来的には全部島内の原料で賄いたい。その為には、ツバキ林を島の経済に組み込んで循環させたいです」。ツバキ林の手入れや島の自然環境を資源としたエコツーリズム等も視野に入れ、可能性を探っている。夢の実現のためにも、職種を横断した仲間作りが、ますます重要になる。
(絵と文/長野亮之介)