山で生きる・森をつなぐ仕事<part.1>
夢はパッチワーク林業
熊谷二一さん(森林組合/愛知県)
40年生の本数調整伐の現場にガツンと矢を打ち込む音が響く。スギが傾くと、開き始めた追い口から、熊谷さんは素早く矢を抜いて腰袋に仕舞う。倒れた木を確認すると間をおかず、枝払いへ。「山師の醍醐味は、太い木を思うように倒すこと」と言う熊谷さん。一連の動きには無駄が無く、流れる様な作業が続く。日本のプロには珍しいジーンズ姿で、テキパキと斜面を歩き回る。
素材生産業の父親に連れられ、子どもの頃から山に親しんだ。平成2年に森林組合に就労するまでは盆栽のディーラーだったが、津々浦々の市場を歩き回る合間を見て、持ち山の手入れも。
仕事で山を見るようになり、あらためて雑木の効果に気づいた。「林床に広葉樹が豊かな山は、崩壊地もないし、木も元気。自分の山では、多少歩きにくくても雑木を残してる」と熊谷さん。地元にある理想の山を見せていただくと、針葉樹の緑色と時節柄の紅葉が程良く混ざり、目を楽しませる山だ。「すべての人工林にこういう森が3割くらいずつあると、日本の山はもっと元気になると思うよ。僕はパッチワーク林業と呼んでます」と熊谷さん。強度間伐し、林床に雑木を導く鋸谷式間伐法にも注目。持ち山の一部に県内第1号の同方式見本林を設定した。従来の杓子定規な森林管理にこだわらず、柔軟な頭を持った山師が必要と言う熊谷さん。新規就林者に期待するところ大だが、即戦力も欲しい。その為にも山師養成学校が必要だと話してくれた。(絵と文/長野亮之介)