山村型ものづくりシステム
山村型ビジネスの時代へ
「山村型ものづくりシステム」は、本情報提供事業の基本コンセプトとなるものです。少し詳しく説明します。
山村型ものづくりシステムとは、山村型ビジネスに欠かせないものづくり及びマネジメントのやり方を指しています。そこでは、資源・資金よりマネジメント能力がモノを言います。普及的活動を駆使し、人々の力を高めていくことが最大の経営戦略になっていきます。
山村型ものづくりとは、いったいなんでしょう。それは、20世紀型ビジネスに対比した考え方であると考えます。
今世紀の日本では、人口増を前提とした経済成長、規模の大きさで効率を上げたやり方が成果を挙げた時代(20世紀)とは、違うやり方が必要になるでしょう。
前世紀は、「規模の世紀」であったといえるのではないでしょうか。規模の世紀とは、規模を拡大することで生産性や効率を上げ、経済を進めてきたモノづくりということ。鉄や自動車などが例です。
けれど、これからは、山村のモノづくり、山村の経済、山村のくらしをモデル(参考)にしたやり方が有効となると考えます。
もともと、山村型ビジネスとは、規模は小さいけれど、いろいろな作物(野菜、山菜・きのこ、木工品、漬け物、自然素材のクラフト商品など)がたくさんあり、自給自足的な部分を合わせて、全体で稼いでいくというやり方です。季節季節に合わせた商品があり、それを上手に利用する。つまり自然をいかして、自然と上手につきあっていくやり方でもあります。
そこでは、ひとつひとつの商品の生産規模を大きくすることは難しいのです。野菜、山菜、きのこなど、自然がつくりだしてくれる範囲で、自然をこわさないよう上手に利用する。だから毎年生産が続き、持続できるのです。生態系の生産力を上手に使用した持続するモノづくり、経済のあり方を示してくれるよいお手本でしょう。
こうしたやり方は、20世紀の規模で稼ぐ発想では、嫌われてきました。なぜなら、効率が悪いとされたから。
しかし、これからはなにか大きなもの、でかい商品一発でどんどん稼いで経済を発展できる時代ではなくなってきています。
マネジメントとネットワークで稼ぐ
だからこそ、山村をモデルとした経済発展の途を提案してみたいのです。
山村では、家々が自然が生んでくれた規模の小さい商品を組み合わせ、稼ぎをつくってきました。それを、地域に広げていく発想があってもいいのではないかと。
今の時代は、昔と違い、規模の小さな事業を数集めて、地域で経済を効率よくつくっていくことができる条件があります。
つまり、一つひとつの事業をバラバラにやっていたのでは、たしかに効率が上がりません。けれど、人々が連携し、上手につながり合うことでものづくり、ビジネスの効率がグンと上がってくる。例を挙げれば産業クラスターの発想です。
例えば、いろいろなものを融通し合う情報ネットワーク。中小の加工・製造業で時期的に足りなくなった原材料を融通し合うとか、商品を共同で開発するとか、サービス産業(例えば森林レクリエーション業界)がつかんでいる顧客を中小の製造業(クラフトや健康食品業界)と共有し合うとか、ネットワークで情報をどんどん流し合うことで、一つひとつの規模は小さくても、地域全体の経済を発展させる方法を探していきたいと考えます。
そこでは、
- 願い、意志の連携・共有
- 情報の連携・共有
- 知の連携・協働
- 資本(規模は小さくとも)の連携
- 人的資源の連携・協働
これらすべてを取り持つ基本は、人と人との関係です。規模でも資金額の多寡でもありません。現代は、ネットワークとマネジメントで稼いでいく時代だと考えます。
第一、コンピューターによる情報通信網と情報処理能力の飛躍的進歩が後押ししてくれているのです。
先に述べた20世紀型規模のモノづくりでは、さほどマネジメント技術は要しません。1カ所に生産設備、流通拠点を収集させ、“目が届く範囲”で管理するから。
ネットワークで稼ぐ時代は、そうはいきません。だから、山村型ビジネスの時代は、マネジメントの時代とも言えるでしょう。
こうして、昔は生産性や能率が悪いとされていた多品種少量生産的なやり方が、見直されるくるでしょう。
その根本には、巨大な資本も、巨大な資源もいらず、環境への負荷も少なく、快適に事業を進めていくやり方が可能だという優れた点があるのです。いま、それを引き出していきたいと考えます。