Iターン者の林業最前線
理想を叶える起業への道
Kさん(43歳/事業を起こす/長野県)
Kさんの暮らす長野県の山村。村内には、Iターン者が多い |
「同じ志をもった仲間とともに、自分たちの考えを反映した山造りをしたい―」。そんな思いのもと誕生したのが林業事業体。その代表を務めるのがKさんだ。
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神奈川県出身のKさんは、周囲の緑が宅地化されていく状況を目の当たりにして育った。山村暮らしへの思いは強く、平成6年に長野県の山村へIターン。「田舎らしい仕事で、資本がなくても始められる(給料がもらえる)のは林業だった」と、素材生産会社や林業家のもとで技術を磨いた。
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「その林業家は、人間の都合だけで強引に働きかけるのではなく、森林のもつ本来の力を活かした林業をやっていました。その思想に共感する人が集まっていたんです」
Kさんたち都会出身者3人が、林業家の山でやってきた林業を他の山でもやろうと、平成12年に新しい事業体を結成した。
「とにかく山で仕事がしたかった。そのためには仕事を見つけてくることが必要でした。そんな時に偶然、森林組合が断った間伐の仕事が舞い込んできたんです。1町歩くらいの神社の山だったんですが、道のない手遅れ林分にもかかわらず、間伐率を抑えて材はできるだけ出して欲しい、という現場でした」
技術的には可能だが、どのくらいの金額でできるのか、まったく見積れなかったという。雇われる立場ではない経営者の視点が、仕事を受注する上では欠かせない。「神社側の自己負担ゼロという条件で請けたんですが、なんとか採算がとれました」。小面積の利用間伐や特殊伐採など、コツコツと実績を重ねるうち、一人一人が現場の採算ラインを掴めるようになってきた。(取材・塚本哲)
「納得のいく仕事をしたい」。「いい山をつくりたい」。同じ志を持った仲間たち。間伐前の林床整理の段階から、山のデザインが始まっている |